未だ収まりを見せない新型コロナウイルスは私達の生活に
大きな変化を与えました。
ウイルス感染を恐れ、不必要な接触を避けたいという
「非接触ニーズ」が広がり、あらゆる分野でデジタル・
トランスフォーメーション(DX)を促進することになりました。
リモートワーク、オンライン会議、宅配サービス、
オンライン診療など、例を挙げたらキリがありません。
今までは「仕事はオフィスに出社して行うもの」
「初診は対面で行わなければいけない」といった
旧来の慣習や規制に縛られ、なかなか広がりを見せて
いなかった分野でも急速にデジタル化が進みました。
まさに2020年のキーワードは「コロナ」ですが、
そこに日興アセットが目をつけ、
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド
『愛称:ゼロ・コンタクト』を新規設定しました。
果たしてどのようなファンドなのかゼロ・コンタクト
を徹底分析していきます。
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド『ゼロ・コンタクト』の基本情報
投資対象は?
ゼロ・コンタクトの投資対象は、世界中の株式で
ゼロ・コンタクトビジネスを行っている企業です。
ゼロ・コンタクトとは、以下のように非接触ビジネスを
行う企業です。
具体的にはリモートワーク、オンライン・サービス、
ストリーミング・メディア、非接触型決済、遠隔提供
サービスのことを指します。
銘柄の選定は、日興アセットが近年、強固なパートナーシップ
を組んでいる米国のアーク・インベストメントです。
アーク社はどの運用会社でも行う伝統的なリサーチ手法だけ
にとどまらず、オンライン・SNSを活用し外部の専門家と
意見交換をしています。
投資テーマについて分析するだけでなく、論文の共同執筆
も行い、その論文をネットで公開し、広く意見を聞き入れる
というとても特殊なリサーチをしています。
では、ゼロ・コンタクトのモデルポートフォリオを見ていきます。
ます国別の組入比率を見てみると、米国が約60%、次いで中国が約16%。
次いで、シンガポール、スウェーデンと続きます。
業種別で見ると、ソフトウェア・サービスやメディア・
エンターテイメントの比率が高く、この2つだけで、
約80%の比率となっています。
エンターテイメントの比率がここまで高いファンドと
いうのは珍しいですね。
そして、現在の組入比率はリモートワーク関連とオンラインサービス関連の
組入比率が高くなっているようです。
まだ、イメージが湧かない人もいるかもしれませんので、
より具体的に組入られている上位銘柄を見てみましょう。
銘柄名 | 企業概要 | |
1 | シー | (シンガポール)ゲーム、eコマースなどのアジア最大級の革新企業。同社のゲームプラットフォームは世界で4億人以上のユーザーを抱えている。 |
2 | スポティファイ | (スウェーデン)世界で人気のあるオーディオ・ストリーミングサービス企業の1つ。月間2億8600万人のアクティブユーザーを抱えている。 |
3 | 美団点評 | (中国)中国最大級の生活関連サイト運営企業の一角。外食店や旅行代理店などの事業者と消費者を結ぶ電子商取引プラットフォームを運営している。 |
4 | ロク | (米国)ビデオストリーミング市場での主要プレーヤーの一角。独自のTV用OSやビデオストリーミング機器を提供している。 |
5 | ネットフリックス | (米国)人気の定額制ビデオ・オンデマンドストリーミングサービス企業。世界中に1億6700万人を超える有料ユーザーがいる。 |
6 | テンセント | (中国)世界的に人気があり、収益性の高いメッセージング・サービスおよびオンライン・サービスを運営している。 |
7 | フェイスブック | (米国)世界最大級のソーシャルメディア・サービス提供企業。 |
8 | トゥイリオ | (米国)簡易にテキスト、電話、ビデオ通信を可能にするソフトウェアの提供企業。 |
9 | トゥーユー | (米国)オンライン学位と教育訓練プログラム用のプラットフォームを提供。学生は質の高い教育を受け、学位の習得を目指すことが可能。 |
10 | スラック | (米国)メッセージングなどの双方向コミュニケーション・サービスの提供企業。 |
銘柄数 | 67銘柄 |
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いてゼロ・コンタクトの純資産総額はどうなっているか
見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から
集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで
銘柄を入れ替えることができなかったり、純資産総額が
大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまく
できず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、
事前に確認すべきポイントの1つです。
ゼロ・コンタクトはわずか数日で900億円を超える規模
にまで成長しており、一瞬で巨大ファンドに成長しました。
規模としては全く問題ないレベルです。
いかに多くの投資家がコロナに関心が高いかよくわかる結果です。
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ゼロ・コンタクトの実質コストはまだ最新の運用報告書が
出ていないためわかりませんが、購入時手数料、信託報酬
ともにかなり強気の設定となっています。
すでに900億円も集まっていますので、運用会社としては
笑いが止まらないでしょう。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.848%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 不明 |
※引用:最新運用報告書
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド『ゼロ・コンタクト』の評価分析
あなたはまだ実感がないかもしれませんが、新型コロナの影響で
デジタル・トランスフォーメーションは間違いなく進んでいます。
一例をあげますが、オンライン会議システムであるZoomや
Cisco Webexの利用者数は3~5倍程度にまで増加しました。
こういった企業の業績がコロナ禍でもとても良い結果になる
のはこの数値をみるだけでわかります。
それ以外にもネットフリックスやアマゾンの決算も非常に
好調で、まさにDX推進に繋がる企業群の業績は目を見張る
ものがあります。
ただ、個人的には、新型コロナの影響が収束し始めるであろう
2021年以降、はたして、組み入れられる企業がどこまで、
伸びるかは甚だ疑問が残ります。
もちろん、ある程度成長する余地があるのは、理解できますが、
DX推進企業だけに絞って投資することにどこまで価値があるのか
見定める必要があります。
AIのような一過性ではない大きな潮流がテーマであれば、面白い
と思いますが、コロナのように一過性のあるテーマのファンド
というのがどこまで伸びるのかあまりイメージが湧きません。
それであれば、S&P500やNASDAQ100を保有しておけば十分な
気もしています。
どちらにしても、すぐに飛びついて投資をするようなファンド
ではないと思いますので、運用実績をしっかり見てから、
投資をすれば十分でしょう。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点