30年以上前に三井住友アセットが設定した三井住友・グローバル・リート・オープン『世界の大家さん』。
年1回決算型と毎月決算型がありますが、純資産総額が多い毎月決算型を集中的に分析していきたいと思います。
「世界の大家さんって持ってて大丈夫なの?」
「世界の大家さんって投資対象としてどうなの?」
「世界の大家さんより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
三井住友・グローバル・リート・オープン『世界の大家さん』の基本情報
投資対象は?
投資対象は、日本を含む世界各国の不動産投資信託(リート)に投資します。
リートとは、多くの投資家から資金を集めて不動産に投資し、その賃料を基にした利益に応じて配当を支払う仕組みです。上場しているリートは取引所で売買できるため、不動産に直接投資するより少額から投資が可能という魅力があります。
※引用:交付目論見書
世界の大家さんでは、安定的に高い配当収益を確保するため、賃貸事業収入比率の高い銘柄を中心に分散投資をしていきます。
組入上位の国を見ていくと、アメリカが38%程度、次いで日本、オーストラリアと続きます。セクター別に見ると、小売りや産業用施設の比率が高くなっています。
※引用:マンスリーレポート
運用の体制は?
実質的な運用はBNPパリバ・アセットマネジメント・グループが行います。BNPパリバは世界で約700名の従業員がおり、76兆円もの資産を運用しています。そのうち、リートの運用チームは平均経験年数17年のベテランメンバー7名で構成されています。
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額が小さいと運用が効率的に行えず、余計なコストが発生したり、運用会社も運用に力を入れないため、パフォーマンスが優れないといったデメリットが発生します。
世界の大家さんは一時期2000億円まで純資産が膨れましたが、毎年純資産が減っており、現在は308億円にまで減少してしまいました。ただ、規模としては全く問題ありませんね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
世界の大家さんの実質コストは1.97%とかなり割高です。購入時手数料とあわせると初年度は5%を超えるので、おすすめはしづらいファンドです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.749%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3 |
実質コスト | 1.97%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
三井住友・グローバル・リート・オープン『世界の大家さん』の評価分析
基準価額をどう見る?
世界の大家さんの基準価額(黄線)は3年間で約15%上昇しています。
分配金を受け取らずに再投資をしたときの基準価額(青線)は、3年前で40%ほど上昇していますので、運用もうまく行っており、分配金を受け取りながら、投資元本も増えている理想の状況です。
ただ、基準価額が3000円台ということからも過去には過剰な分配をしてきたファンドであることがわかりますね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
世界の大家さんの直近1年間の利回りは3.33%となっています。
5年、10年平均利回りは3~4%で、3年平均利回りだけ10%を超えています。
パフォーマンスを判断する上では、この利回りと、他の類似ファンドとのランキングを確認して投資判断をしていきましょう。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +3.33% |
3年 | +12.95% |
5年 | +2.70% |
10年 | +4.34% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外REIT ランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
せっかく投資をするのであれば、同じカテゴリー内でも、優れたファンドに投資をするべきです。
世界の大家さんはグローバルREIT(日本含む)カテゴリーに属しています。
このカテゴリー内でのランキングを確認すると、どの期間の利回りを見ても、平均以下となっています。つまり、世界の大家さん以外にもっと優れたファンドが多数あることを意味します。
上位●% | |
1年 | 75% |
3年 | 71% |
5年 | 80% |
10年 | 85% |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
世界の大家さんの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
思った以上にマイナスで終わっている年が多くなっています。
平均利回りで見ると、プラスになっていますが、毎年安定してプラスの利回りで運用できているわけではないので、注意してください。
年間利回り | |
2023年 | +3.58%(1-9月) |
2022年 | ▲8.76% |
2021年 | +31.96% |
2020年 | ▲15.91% |
2019年 | +18.48% |
2018年 | ▲10.14% |
2017年 | +5.58% |
2016年 | ▲0.32% |
2015年 | ▲4.36% |
2014年 | +32.63% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
世界の大家さんに投資を検討する上で、インデックスファンドとのパフォーマンス比較をしてみましょう。
今回は、世界のREITの代表的な指標であるS&P グローバルリートインデックスに連動するニッセイGリートインデックスファンドとパフォーマンスの比較を行いました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、2021年以降、ニッセイGリートインデックスファンドが勝っています。
より長期のパフォーマンスではどうでしょうか。
年平均利回り | 世界の大家さん | ニッセイGリート |
1年 | +3.33% | +7.70% |
3年 | +12.95% | +15.94% |
5年 | +2.70% | +6.20% |
10年 | +4.34% | - |
※2023年10月時点
5年平均利回りで見ても、ニッセイGリートインデックスファンドがリードしており、これでは高いコストを支払ってまでアクティブファンドに投資する気にはなれません。
最大下落率は?
世界の大家さんに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここで世界の大家さんの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲35.78% |
3カ月 | ▲51.37% |
6カ月 | ▲61.95% |
12カ月 | ▲64.94% |
※2023年10月時点
最大下落率は2008年3月~2009年2月の1年間で▲64.94%となっており、株式ファンド以上に下落幅が大きいことがわかります。
これはリーマンショック時の下落幅ですが、コロナショックでも同じように株式相場に匹敵する下落幅を記録しています。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲209円 | 185円 | ▲12% |
※2022/10/20~2023/10/20
世界の大家さんの直近1年間の分配健全度は▲12%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。
世界の大家さんはマイナスですので、あなたが今年受け取った分配金はすべて投資元本等が取り崩されて支払われているということです。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
世界の大家さんの分配金利回りは6.0%と比較的健全な水準の分配金です。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | +3.33% | 6.0% |
3年 | +12.95% | |
5年 | +2.70% | |
10年 | +4.34% |
※2023年10月時点
ただ、ファンドの運用利回りのほうが低い期間ありますので、少なくともこの期間はタコ足配当が行われていることがわかります。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
世界の大家さんの分配金余力は、まだ300カ月以上ありますので、減配の心配はないと言えます。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
221期 | 20円 | 5,583円 | 280.2カ月 |
222期 | 20円 | 5,572円 | 279.6カ月 |
223期 | 20円 | 5,557円 | 278.9カ月 |
224期 | 15円 | 5,541円 | 370.4カ月 |
225期 | 15円 | 5,531円 | 369.7カ月 |
226期 | 15円 | 5,524円 | 369.3カ月 |
227期 | 15円 | 5,516円 | 368.7カ月 |
228期 | 15円 | 5,515円 | 368.7カ月 |
229期 | 15円 | 5,509円 | 368.3カ月 |
230期 | 15円 | 5,498円 | 367.5カ月 |
231期 | 15円 | 5,494円 | 367.3カ月 |
232期 | 15円 | 5,492円 | 367.1カ月 |
評判はどう?
世界の大家さんの評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流出しているということは、それだけこのファンドを解約している人が多いということなので、評判が悪いということです。
世界の大家さんは2018年以降、毎月資金が流出しており、非常に評判が悪いことがわかります。他のグローバルREITファンドと比べてパフォーマンスが優れないというのも流出がつづくひとつの要因となっています。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
世界の大家さんのNISAやiDeCoの対応状況ですが、NISAに対応しています。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2023年10月時点
三井住友・グローバル・リート・オープン『世界の大家さん』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
世界のリート指数は、年平均利回りにして5%程度の運用は十分に期待ができます。
現在の世界の大家さんの分配金利回りが6%台なので、この利回りであれば、配当を受け取っていたとしても、基準価額が大きく下落する心配はないでしょう。
ただ、改めてになりますが、ファンドの運用利回りと分配金利回りは全くの別物です。
運用利回り10%と言えば、100万円を投資した場合、年10万円の運用益を受け取ることができます。
一方で、分配金利回り10%という場合は違います。仮にファンドの運用利回りが3%しかなくても分配金利回りを10%にすることはできるのです。
その結果、100万円投資をして、ファンドの運用益は3万円しかないにもかかわらず、あなたは10万円の分配金を受け取ることになります。
では、運用益と分配金の差額の7万円はどこから出てきているのかと言えば、あなたの投資した元本の100万円から支払われているのです。つまり、分配金利回りがいくら高くても、ファンドの運用利回りが低ければ、まったく意味がないということです。
毎月分配型ファンドは私はそもそもおすすめはしませんが、それでも投資をしたいという場合、ファンドの選定基準は分配金利回りが高いか低いかではありません。
ファンドの運用利回りがちゃんとプラス(大きいほど良い)で運用利回りの範囲内か、少し超える程度で分配金を出しているファンドを選ぶべきです。
またS&Pグローバルリート指数に連動するインデックスファンドにパフォーマンスで負けるようでは、あえて高いコストを支払ってまで、投資をするメリットはありません。
このブログでは何度も言っていますが、インデックスファンドに負けるようなアクティブファンドには投資する価値がありません。
もし現在も保有しているのであれば、即刻解約してもっと優れたアクティブファンドに投資をしましょう。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点