2015年以降、爆発的な人気を見せているスパークスのスパークス・新・国際優良日本株ファンド『厳選投資』。
一般的には、幅広い銘柄をもつことで、リスクを分散することができると言われていますが、厳選投資は銘柄数を絞りながらもリスクを分散させすぐれた成績を残しています。
ブログで何度も紹介はしていますが、詳細分析はしてこなかったので、今日は徹底的に分析していきます。
「厳選投資って投資対象としてどうなの?」
「厳選投資って持ってて大丈夫なの?」
「厳選投資より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
スパークス・新・国際優良日本株ファンド「厳選投資」の基本情報
投資対象は?
厳選投資の投資対象は、日本国内の株式で、高い技術力やブランド力があり、今後グローバルでの活躍が期待できる日本企業を中心に投資を行います。
スパークスでは、このような企業を新・国際優良企業と呼んでいますが、もう少し具体的に説明すると、①国内市場において圧倒的なシェアを獲得しており、②今後、海外売上高比率の拡大も期待することができ、③世界的なブランド力を有することが期待できる企業のことを指します。
※引用:交付目論見書
海外進出に成功した企業というのは、新興国などの世界経済の成長からの恩恵を受けやすく、世界的に通用するブランド力を有することで、外国人投資家の投資対象にもなるというメリットがあるわけですね。
※引用:交付目論見書
現在の組入れ銘柄は25銘柄ですが、すべてプライム市場の銘柄となっています。業種別の構成比率をいると、電気機器の比率が高くなっていますね。
厳選投資が組み入れている上位5銘柄を見ていきましょう。誰もが知っている企業ばかりですが、本当に優れた銘柄だけに絞り込むことでパフォーマンスを上げています。
※引用:マンスリーレポート
運用体制は?
厳選投資が圧倒的なパフォーマンスを残せているのは、スパークスの運用体制にあります。
「マクロはミクロの集積である」という投資哲学に基づき、年間2500回以上の企業訪問をもとに、財務諸表を多角的に分析し、割安な企業を探しています。
20~30銘柄に厳選して投資をするというのも特長で、集中投資はリスクが高いとも思われがちですが、銘柄選定に自信があるからこそ、絞り込めるわけですね。
銘柄選定に自信がない運用会社ほど、リスク回避の意味を込めて、100社200社と組入銘柄を増やしていたりします。
ファンドマネージャ-の武田政和さん率いる運用調査部の平均運用年数は15年と長く、経験豊富なベテランが企業調査の分析・調査を行っています。
純資産総額は?
続いて、厳選投資の純資産総額はどうなっているか見ていきます。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができませんし、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
厳選投資はコロナショック時に大きく純資産を減らしましたが、その後、パフォーマンスが回復してくるに伴い、純資産が増えています。現在は1700億円程度の規模ですので、十分大きいですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
厳選投資の実質コストは1.86%となっており、かなり割高な水準です。高い運用実績がでているので良いですが、普通であれば、コストが高すぎてまずおすすめしません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.804%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.86%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
スパークス・新・国際優良日本株ファンド「厳選投資」の評価分析
基準価額をどう見る?
スパークス・新・国際優良日本株ファンド「厳選投資」の基準価額は、2021年までは堅調に推移していましたが、2022年に入り大きく下落しています。
その後、2023年には大きく戻していますが、未だ高値更新とはなっていません。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、厳選投資の運用実績を見ていきます。
直近1年間の利回りは+19.03%となっていますが、3年、5年、10年平均利回りを見ても悪くないように見えますが、まだこの段階で良しあしを判断してはいけません。
他のファンドと比較をしてから最終的な判断をしていきましょう。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +19.03% |
3年 | +8.78% |
5年 | +7.50% |
10年 | +14.63% |
※2023年9月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
厳選投資は、国内の大型株カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、大型株カテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
厳選投資は、3年、5年のパフォーマンスは優れませんが、1年と10年の平均利回りはかなり上位に来ています。
アクティブファンドは一時的にパフォーマンスが悪くなることもあるので、許容範囲だと思ってください。
上位●% | |
1年 | 23% |
3年 | 87% |
5年 | 77% |
10年 | 6% |
※2023年9月時点
年別の運用利回りは?
厳選投資の年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2018年は▲5.69%、2022年は▲20%となっていますが、それ以外の年はかなり優れたパフォーマンスを残しています。
これくらい毎年プラスになっているファンドなのであれば、安心して投資ができますね。
年間利回り | |
2023年 | +24.41%(1-9月) |
2022年 | ▲20.04% |
2021年 | 10.96% |
2020年 | 21.44% |
2019年 | 18.65% |
2018年 | ▲5.69% |
2017年 | 29.15% |
2016年 | 7.37% |
2015年 | 18.52% |
2014年 | 26.13% |
※2023年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとの利回り比較
アクティブファンドに投資をするのであれば、インデックスファンドよりも優れたパフォーマンスでなければ投資をする価値がありません。
厳選投資は国内大型株が中心のファンドなので、日経225に連動するニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間はほぼ全期間において、ニッセイ日経225インデックスファンドに負けてしまっています。
アクティブファンドの運用というのは、常にインデックスファンドを上回る運用ができるというわけではなく、トータルで見ると、インデックスファンドを上回る運用ができていることが多いので、こういう状況もあるということは覚えておいてください。
10年平均利回りも見ると、インデックスファンドに大きく差をつけていますので、高いコストを支払ってでも投資をする価値があると言えるでしょう。
年平均利回り | 厳選投資 | ニッセイ日経 225 |
1年 | +19.03% | +18.36% |
3年 | +8.78% | +13.94% |
5年 | +7.50% | +9.22% |
10年 | +14.63% | +11.08% |
※2023年9月時点
類似ファンドとの利回り比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、同じカテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたいと思うもの。
今回は、同じく国内大型株カテゴリーで中長期で高いパフォーマンスの残しているOne 国内株オープン『自由演技』とパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
こちらも、直近では『自由演技』が差を広げてリードしています。
5年、10年の長期のパフォーマンスで比較をしてみても、『自由演技』が上回っていますので、どちらに投資をするかと言えば、自由演技ということになりますね。
年平均利回り | 厳選投資 | One 国内株オープン |
1年 | +19.03% | +20.87% |
3年 | +8.78% | +16.73% |
5年 | +7.50% | +10.00% |
10年 | +14.63% | +15.36% |
※2023年9月時点
最大下落率はどれくらい?
投資を始めようとしている、もしくは始めたばかりの人が気になるのが、最大どの程度、資産が下落する可能性があるのかという点かと思います。
どの程度下落するのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
標準偏差からある程度の変動範囲を予測することもできますが、過去に実際にどの程度下落したのかを確認しておいたほうがよいでしょう。
そこで、厳選投資の最大下落率を調べてみました。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.36% |
3カ月 | ▲21.40% |
6カ月 | ▲24.80% |
12カ月 | ▲22.87% |
※2023年9月時点
厳選投資は2008年8月に一番タイミング悪く買って、2009年1月に一番タイミング悪く売った場合に最大▲24.80%あなたの資産が目減りした可能性があります。
リーマンショックのさなかに設定されたファンドなので、直撃しなかったというのもありますが、10年超の運用実績がありながら、最大下落率が20%程度で抑えられているというのは評価できます。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配金は?
厳選投資は年1回分配金を出しています。分配金は出す必要がないと思ってしまいますが、500円程度であればこのパフォーマンスからすると何ともないので、今後も分配金は維持できる可能性が高いです。
また、このブログでは何度も言っていますが、分配金は受け取らずに再投資したほうが投資効率は確実に高くなります。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | |
2023年 | 500円 |
2022年 | 500円 |
2021年 | 500円 |
2020年 | 500円 |
2019年 | 500円 |
2018年 | 500円 |
2017年 | 500円 |
2016年 | 500円 |
2015年 | 500円 |
※引用:ウエルスアドバイザー
評判はどう?
続いて、厳選投資の人気度合を見ていきたいと思います。人気度合を測る指標としては、ファンドへの資金流出入額が参考になります。
資金が流入しているということは多くの投資家がファンドを購入しているということなので、人気があるということになります。逆に資金が流出しているということは人気がなくなっているということですね。
2021年、2022年はファンドの評判が戻ってきましたが、2023年に入り、また資金が流出超過となり始めましたので、人気に陰りが見えています。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
現在はマネックス証券、第一生命保険経由でiDeCoの加入ができます。
NISA | iDeCo |
○ | マネックス証券、第一生命保険 |
※2023年9月時点
スパークス・新・国際優良日本株ファンド 『厳選投資』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
日本株のインデックスファンドももちろん悪くありませんが、せっかくこれだけ優れたファンドがあるので、ポートフォリオの一部に厳選投資のようなアクティブファンドを入れておくのも悪くない考え方だと思います。
スパークスという名前を聞いたことがない人もいるかもしれませんが、運用に携わっている人間に言わせると、「日本株のアクティブファンドに投資をしたいなら、スパークスが無難」と言われるほど、日本株=スパークスが強いという公式が業界に広まりつつあります。
何度も繰り返しになりますが、圧倒的な分析力をもとに、30銘柄程度に絞り込めるのは、運用における自信の表れです。普通はできません。
「マクロはミクロの集積である」という投資哲学が社内のDNAとして、受け継がれている限り、運用体制が一部変わったとしても、分析力が大きく落ちることはないと考えており、厳選投資は高いパフォーマンスを出し続けてくれると思いますので、引き続き期待したいと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点