SDGs(持続可能な開発目標)関連の企業に投資が集まる昨今、その流れに合わせて各運用会社が設定しているのが、脱炭素関連のファンドです。
今日は、その中でも三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用する脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)について徹底分析していきます。
「脱炭素関連 世界株式戦略ファンドって投資対象としてどうなの?」
「脱炭素関連 世界株式戦略ファンドって持ってて大丈夫なの?」
「脱炭素関連 世界株式戦略ファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の基本情報
カーボンニュートラルとは?
まず、カーボンニュートラルについて簡単に説明しておきます。
科学技術の発展と急激な人口増加により、私たちが排出するCO2は自然が吸収可能な許容範囲を大きく超えて、地球の平均気温は毎年上昇しています。
この上昇を止めなければ、いずれ人間が地球上で生活できなくなるということで、掲げられたのが、「カーボンニュートラル」です。
カーボンニュートラルとは、企業や家庭から出る二酸化炭素(CO2)の温室効果ガスを減らし、森林による吸収分等と相殺することで、実質的な排出量をゼロにすることを言います。
この脱炭素社会を実現するために、イノベーションを起こしている企業に投資をしていくのが、脱炭素関連 世界株式戦略ファンドです。
投資対象は?
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の投資対象は、全世界の株式です。
組み入れ比率を見てみると、米国が40%、次いでフランス、アイルランドが続きます。全世界の株式に投資をするファンドで、米国の比率が40%と低いのは、珍しいですね。
※引用:マンスリーレポート
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドの現在の組入銘柄数は34銘柄で構成されており、組入上位10銘柄は以下のようになっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
つづいて、脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の純資産総額を見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、監査費用や印刷費用、その他諸経費が相対的に比率が高くなるので、実質コストが高くなりがちです。また会社としてもファンドの運用に人員を割けなくなるため、パフォーマンスが悪化する原因にもなります。
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の純資産総額は、現在約905億円です。注目のテーマではありましたが、パフォーマンスが優れないため、人気にも陰りが見えます。ただ、規模としては十分大きいですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託を運用する際には、購入時手数料や信託報酬以外にも、実際にはコストがかかっています。具体的には、株式売買手数料や有価証券取引税、印刷費用などが該当します。
これを実質コストと言いますが、実質コストが信託報酬よりもかなり高くなっていることもありますので、必ず事前に確認しておいたほうがよいポイントです。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドの実質コストは1.851%となっており、かなり割高です。購入時手数料もしっかり3.3%かかりますので、これでは気軽に投資できません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.848%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.851%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の評価分析
基準価額をどう見る?
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドの基準価額を見てみましょう。
大きく上下に変動していますが、3年間であまり上昇していませんね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
それでは、脱炭素関連 世界株式戦略ファンドの運用実績を見ていきます。
直近1年間の利回りは24.42%となっています。1年のパフォーマンスは優れているようですが、この時点で良し悪しを判断するのは時期尚早です。他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしましょう。
平均利回り | |
1年 | +24.42% |
3年 | - |
5- | - |
10- | - |
※2023年11月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内中小型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドは、国際株式・グローバル・除く日本カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同カテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
利回りが良く見えても、実は同カテゴリー内では、ランキングが低かったということがよくあります。
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドは直近1年間の利回りは上位20%に入っているので、優秀です。
上位●% | |
1年 | 21% |
3年 | - |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年11月時点
年別のパフォーマンスは?
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の年別の利回りを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2023年は20%を超えてるプラスですが、2022年は大きくマイナスになっており、これでは大したリターンは期待できません。
年間利回り | |
2023年 | +22.15%(1-9月) |
2022年 | ▲20.90% |
※2023年11月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドに投資をするかを考える上で、超低コストで投資ができるインデックスファンドとパフォーマンスの比較は必須です。
パフォーマンスが大きく劣るようであれば、わざわざ高いコストを支払ってまで投資をする価値がないからです。
そこで、今回は、脱炭素関連 世界株式戦略ファンドと全世界の株式に投資ができて非常に人気の高いeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)とパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、2022年以降、eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)が大きく差を拡げています。
これでは、高いコストを支払ってまで、脱炭素関連 世界株式戦略ファンドに投資をするメリットがありません。
年平均利回り | 脱炭素関連 世界株式戦略ファンド | slim オールカントリー |
1年 | +24.42% | +23.71% |
3年 | - | +20.23% |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2023年11月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドに投資をするかを検討するのであれば、アクティブファンドともパフォーマンスを比較しておきましょう。
投資信託は6000本以上ありますので、もっと優れたファンドが見つかるかもしれません。
今回は、全世界の株式に投資ができるということで非常に人気の高いセゾン投信のセゾン 資産形成の達人ファンドとパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、2022年以降、資産形成の達人ファンドのほうがパフォーマンスで上回っています。
高いコストを支払うにしても、脱炭素関連 世界株式戦略ファンドにあえて投資をするメリットがないですね。
年平均利回り | 脱炭素関連 世界株式戦略ファンド | 資産形成の達人 |
1年 | +24.42% | +20.46% |
3年 | - | +15.09% |
5年 | - | +9.75% |
10年 | - | +11.73% |
※2023年11月時点
最大下落率は?
投資信託は最低でも5~10年は投資をする気でなければ、投資をする意味がありませんが、その最大の障壁となりえるのが、資産の減少です。
特に20%や30%の下落相場を始めて経験すると、資産の減少額に耐えきれなくなり、本来手放すべきタイミングではないときに慌てて売却してしまいがちです。
そのため、事前にどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
それでは、脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の最大下落率を調べてみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲16.31% |
3カ月 | ▲15.61% |
6カ月 | ▲19.53% |
12カ月 | ▲20.90% |
※2023年11月時点
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の最大下落率は2022年1月~2022年12月で▲20.90%となっています。まだ運用期間が短いため、大きな下落を経験していないようです。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の評判を確認する上で、毎月の資金の流出入が役立ちます。
資金流入が多くなっていれば、人気が出てきているファンドであるとわかりますし、流出が続いているようであれば、評判が悪くなっているファンドと言えます。
それでは、脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の評判を見てみましょう。
2021年の設定当時は大きく資金が流入しましたが、2022年以降は流出超過に転じており、評判は良くないようですね。インデックスファンドに負けてしまっているので、ある意味当然の結果でしょう。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
脱炭素関連 世界株式戦略ファンドはNISAのみ取り扱いがありますので、投資をする場合は積極的にこの制度を活用していきましょう。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2023年11月時点
脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
私は大きく2つの点から脱炭素関連 世界株式戦略ファンドに注目しています。
1つは近年のSDGsやESGに対する投資家の姿勢です。冒頭にも述べましたが、多くの投資家がSDGsやESGに大きな関心を寄せています。
少なくとも当面はこういったテーマの銘柄には資金が集まってくると思いますので、組み入れられている銘柄も上昇していく可能性が大いにあります。一昔前は、なかなか資金が集まっていませんでしたが、大きく流れが変わってきていますね。
2つ目が、CO2排出量の40%以上を占めるアメリカと中国がいよいよ本腰を入れてカーボンニュートラルに舵を切り始めたという点です。
中国は2030年のCO2排出量削減目標を引き上げ、2060年までのカーボンニュートラル達成を表明しています。アメリカは大統領選の公約の1つとしてパリ協定への復帰を表明し、2021年2月にはパリ協定に正式復帰しました。
これによりカーボンニュートラルが世界の潮流となると考えられます。
今後も、カーボンニュートラルの分野には巨額の投資が見込まれていることからも、大きな成長が期待できる分野であると思います。
ただ、現時点ではまだ運用期間が短いので、もう少し長期のパフォーマンスを見てから判断したいという点と、現状eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)にパフォーマンスで負けてしまっているので、あえて投資をするメリットはないですね。
今後のパフォーマンスに注目したいと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点