リスクを取りたくない日本人から圧倒的な支持を集めているバランス型ファンド。
未だ約1500億円の規模があり、多くの投資家が投資をしているのが、JPM ベスト・インカム(毎月決算型)です。
JPM ベスト・インカムは毎月決算型と年1回決算型がありますが、今日は、人気の高い毎月決算型を中心に分析していきます。
年1回決算型を保有しているもしくは検討している人も参考になると思いますよ。
「JPM ベスト・インカムって投資対象としてどうなの?」
「JPM ベスト・インカムって持ってて大丈夫なの?」
「JPM ベスト・インカムより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
JPM ベスト・インカム(毎月決算型)の基本情報
投資対象は?
投資対象は、世界の債券、株式、リートで、高いインカム収益と値上がり益が期待できるアセットクラスに分散投資をしていきます。
インカム収益というのは、「債券の利息」や「株式の配当金」など一定期間ごとに受け取ることのできる収益のことで、安定した収益が期待できるのが特徴です。
価格の下落分を安定したインカム収益で補うことで、プラスのリターンを維持すると書かれていますが、残念ながら、そううまく行くわけではないので、軽々しく信用してはいけません。
※引用:交付目論見書
通常のバランスファンドですと、債券部分はリスクの低い債券を中心に組み込みますが、JPM ベスト・インカムの場合は債券の中でもリスクの高いハイ・イールド債券や新興国債券を中心に組み込まれています。
債券と名前はついているものの、株式のように値動きをすることが多いので、注意が必要です。
現在の組入構成は下図のようになっており、株式が約35%、債券が約45%、その他が約10%となっています。
一見、債券の割合が高くなっており、リスクを抑えた運用がされているように見えますが、さきほど言った通りリスクの高い債券に投資をしており、かなり値動きしますので、リスクが分散されているとは言いづらい状況です。
※引用:マンスリーレポート
株式部分の構成比率を見てみると、北米と欧州で80%ほどを占め、残りの20%が新興国とアジア・オセアニア地域となっています。
※引用:マンスリーレポート
続いて、組入れられている債券部分の格付評価を見てみましょう。
格付というのは、投資した元本と利息がちゃんと支払われるかどうかを評価したものです。
BB以下の評価の債券は投資不適格債券といって、一般的に機関投資家はリスクが高いため手を出しません。JPM ベスト・インカムでは、約70%がリスクの高い債券に投資されています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
JPM ベスト・インカムは2017年の終わりごろまで安定的に純資産を増やしていましたが、2020年以降は純資産が減少に転じています。
それでも、純資産総額は1500億円はありますので、規模としては全く問題ありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
JPM ベスト・インカムの実質コストは1.626%となっており、かなり割高です。購入時手数料と併せて5%近くになりますので、本当に良いファンドでないとおすすめできません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.62%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.626%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
JPM ベスト・インカム(毎月決算型)の評価分析
基準価額をどう見る?
JPM ベスト・インカムの現在の基準価額は、2021年を境に、大きく下落を続けています。
また、分配金を受け取らずに再投資をした場合の基準価額(青線)も同じように下落しており、金利高による債券価格の下落の影響をもろに受けている形です。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
JPM ベスト・インカムの直近1年間の利回りは▲0.15%となっています。
3年平均、5年平均利回りも▲1%となっており、明らかにパフォーマンスが悪いことが分かります。これは他のファンドと比較をするまでもないですが、一応他のファンドと比較するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲0.15% |
3年 | ▲1.30% |
5年 | ▲0.91% |
10年 | - |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年平均利回りランキングで見る圧倒的に優れた投資信託まとめ
同カテゴリー内での利回りランキングは?
JPM ベスト・インカムは、バランス型ファンドの中でも、RIETと株式の組入比率が、25%以上50%未満のカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
JPM ベスト・インカムは案の定、どの期間を取っても、下位15%にランクインしていますので、これでは投資をする気になりませんね。
上位●% | |
1年 | 92% |
3年 | 86% |
5年 | 91% |
10年 | - |
※2023年10月時点
年別の運用利回りは?
JPM ベスト・インカムの年別の運用パフォーマンスを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
株式と債券が半々くらいのファンドの場合、10%くらいの下落は時々発生しますので、そのつもりで投資をするようにしてください。
年間利回り | |
2023年 | ▲3.92%(1-9月) |
2022年 | ▲14.39% |
2021年 | +8.89% |
2020年 | +1.87% |
2019年 | +11.70% |
2018年 | ▲7.77% |
2017年 | +6.50% |
2016年 | +4.94% |
2015年 | ▲1.40% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは類似ファンドとのパフォーマンス比較
JPM ベスト・インカムは通常のバランス型ファンドよりも幅広いアセットクラスに分散していますが、果たして、その効果はあるのでしょうか?
ここでは、バランス型ファンドで非常に人気の高い、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)と比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)のほうが上回っています。
バランス型ファンドの場合、組入れ比率がまったく同じというわけではないので、比較が難しい部分もありますが、それにしてもこれだけ差がついてしまうと、あえて高いコストのJPM ベスト・インカムを選択する理由はありません。
JPMベスト・インカム | slimバランス | |
1年 | ▲0.15% | +11.47% |
3年 | ▲1.30% | +10.11% |
5年 | ▲0.91% | +6.31% |
10年 | - | - |
※2023年10月時点
最大下落率は?
投資を始めようとしている、もしくは始めたばかりの人が気になるのが、最大どの程度、資産が下落する可能性があるのかという点かと思います。
どの程度下落するのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
標準偏差からある程度の変動範囲を予測することもできますが、過去に実際にどの程度下落したのかを確認するのがおすすめです。
それでは、JPM ベスト・インカムの最大下落率を調べてみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲14.48% |
3カ月 | ▲15.69% |
6カ月 | ▲14.35% |
12カ月 | ▲15.65% |
※2023年10月時点
JPM ベスト・インカムでは、2020年1月~2020年3月までの間に最大15.69%下落しています。バランスファンドということもあり、比較的下落幅は小さく済んでいます。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲565円 | 360円 | ▲57% |
※2022/10/7~2023/10/10
JPM ベスト・インカムの直近1年間の分配健全度は▲57%となっています。分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味します。
JPM ベスト・インカムの場合、マイナスになっていますので、ファンドの収益以外から分配金がすべて支払われています。
とても危険な状態にあるファンドと言えますね。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
(分配金利回りは基準価額に対する分配金合計額で計算ができます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | ▲0.15% | 5.03% |
3年 | ▲1.30% | |
5年 | ▲0.91% | |
10年 | - |
※2023年10月時点
JPM ベスト・インカムの分配金利回りは約5%で、ファンドの運用利回りを上回っています。ファンドの運用がマイナスになっていますので、分配金が運用収益以外からの支払いになっていることがわかります。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
JPM ベスト・インカムの分配金余力は、20カ月程度ですので、まだ余裕はありますが、パフォーマンスが悪化すると、危険水域に入ってくる可能性があります。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
97期 | 30円 | 551円 | 19.4カ月 |
98期 | 30円 | 566円 | 19,9カ月 |
99期 | 30円 | 580円 | 20.3カ月 |
100期 | 30円 | 592円 | 20.7カ月 |
101期 | 30円 | 596円 | 20.9カ月 |
102期 | 30円 | 601円 | 21.0カ月 |
※引用:最新運用報告書
評判はどう?
JPM ベスト・インカムの評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけJPM ベスト・インカムを購入している人が多いということなので、評判が良いということです。
JPM ベスト・インカムは2018年までは、毎月、資金流入していましたが、2019年以降は流出超過となっています。
やはりバランス型のインデックスファンドにパフォーマンスで負けているようでは、積極的に投資をしようとは思えないということでしょう。
※引用:ウエルスアドバイザー
JPM ベスト・インカム(毎月決算型)の評価まとめと今後の見通し
いかがでしたでしょうか?
一言でバランス型ファンドといっても、組入られているファンドやアセットクラスによって、パフォーマンスは全く変わってきます。
JPM ベスト・インカムで言えば、リスクの高い債券の比率が高いため、あなたが想定している安定した運用というのが実現できない可能性があります。
ファンドを購入した後だとなかなか勉強する気が起きないと思いますので、本当に自分の希望がかなうファンドなのか購入する前にしっかり考えるくせをつけてくださいね。
また、この程度のパフォーマンスなのであれば、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)を選択したほうが低コストで効率のよい運用ができますし、株式100%のインデックスファンドに投資をして現金保有率でリスクを調整するというのも可能です。
あえて高いコストを支払ってまで投資をするファンドではないことは間違いありません。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点