最近流行りの8資産への分散投資ができるリスクコントロール
世界資産分散ファンド『マイスタート』。
8資産への分散投資ができるファンドもだいぶ数が増えてきて
おり、大抵どのファンドも相場が変動したときには機動的に
アセットアロケーションを変えるようなことが書いてあります。
しかし、実態はこの機動的なポートフォリオの変更というのは
まさにファンドマネジャーの腕の見せ所であり、失敗すると
まったく予期せぬ結果となることが多々あります。
はたして、マイスタートはコロナショックをうまく乗り切れた
のか、独自の目線で分析していきます。
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の基本情報
投資対象は?
マイスタートの投資対象は、国内外の8資産に分散投資を行い、
中長期的に安定的なリターンの獲得を目指します。
ファミリーファンド方式を採用しており、下記のようにパッシブ
ファンドで構成されています。
※引用:交付目論見書
運用の特徴は?
マイスタートの大きな特徴として、ポートフォリオの変動リスクを
年率2%程度に抑えた安定的な運用を行います。
どのように抑えるのかということですが、下図のように、
価格変動の要因となる事象を均等に配分することで、
どんなイベントにも平均的なリスクしか取らないように
しています。
※引用:交付目論見書
マイスタートの組み入れ比率を見てみると、なかなか興味深い
状況となっています。
安定資産が約33%、リスク性資産が約7%、現金が約60%と
いう構成です。
リスクを年2%程度に抑えることを宣言してしまっているが
故に、本来リスクを取るべきタイミングで取れなくなって
います。
現金比率60%というのはかなり安全な運用をしていますが、
重要なのは、この部分にもしっかり信託報酬はかかって
きているということです。
自分が現金で保有しているだけであれば、全く問題ありませんが、
運用会社が現金で保有しているというのは、実質的にコストだけ
がかかっているという状況です。
投資家としてはたまりませんね。
※引用:マンスリーレポート
そしてもう一つの特徴が、最近流行りの基準価額の下落を
一定水準までに抑える運用を行うことです。
過去1年間の基準価額の最高値から10%の水準に下値目安が
なるように運用していきます。
特に投資信託を買って放っておいてしまうような人だと、久々に
基準価額を見たら、すごく下がっていたなんてことが起こりえます
ので、そういう意味では安心です。
しかし、そもそも年率2%程度のリスクしかとらない運用を行うにも
かかわらず、10%以上下落しないようにリスクヘッジをしている運用
というのは、何がしたいかよくわかりませんね。
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を
入れ替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少して
いると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを
生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』は設立
してまだ2年程度ですが、すでに1000億円を超えて純資産が大きく
なっており、非常に人気が出ています。
規模としては全く問題ありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の
実質コストは1.12%と比較的低く設定されています。
しかし、通常のアクティブファンドよりコストは低めですが、この
ファンドが購入しているのは、超低コストのインデックスファンド
なので、それを考慮すると決して安いとは言えません。
リターンの約30%を手数料で取られていると考えれば、いかに高い
かがよくわかりますね。
購入時手数料 | 1.1%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.089%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.12%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の評価分析
基準価額をどう見る?
マイスタートの基準価額を見ると、かなり特徴的な値動きに
なっていることがわかります。
コロナショック後、たいていのファンドは反発して、50%
以上戻していますが、マイスタートは全くと言っていい
ほど戻りがありません。
これは、リスクを年率2%以内に抑えることを目標として
運用している弊害ですが、すでにリスクが年率2%を
はるかに超えており、
これ以上リスクを取れないと判断したファンドマネジャーが
現金比率を高めて運用してしまった結果と言えます。
リスクの低い運用が悪いとは思いませんが、下落した底値で
現金に換金して、怖くて手が出せなくなっているというのは
投資で一番やっていはいけないお手本のような運用になって
います。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の
直近1年間の利回りは▲0.97%です。
半年前から大きく利回りが下落しました。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | 2020年1月 | 2020年7月 |
1年 | +6.04% | ▲0.97% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2020年7月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年平均利回りランキングで見る圧倒的に優れた投資信託まとめ
同カテゴリー内における利回りランキング(上位●%)の変化
マイスタートは、バランス型ファンドの安定カテゴリーに
属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をしたいと思うので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
マイスタートは半年前から平均的な位置にいましたが、
コロナショック後は大きく順位を落とす結果となっています。
さきほどの基準価額の推移を見れば当然の結果ですね。
2020年1月 | 2020年7月 | |
1年 | 46% | 68% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2020年7月時点
年別のパフォーマンスは?
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の年別の
パフォーマンスを見てみましょう。
2019年は6.04%のプラスということで幸先の良いスタートがきれて
います。
プラスが出ているので、あまり気にする人はいないと思いますが、
年率2%程度に抑える運用はできていないようですね。
年間利回り | |
2020年 | ▲2.76%(1-6月) |
2019年 | 6.04% |
※2020年7月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
類似ファンドとのパフォーマンス比較
マイスタートに投資をするのであれば、他のバランス型の
アクティブファンドとパフォーマンスを比較しておいて
損はありません。
今回は、株、債券、RIETにリスクを抑えた分散投資をする
投資のソムリエとパフォーマンスを比較してみます。
どちらもかなり安定的な運用を目指すファンドですが、
コロナ前の運用から大きく差が開いており、コロナショック
でさらに差が大きくなっています。
投資のソムリエは機動的なアセットアロケーションの
変更で、うまくコロナショックを乗り切ったファンドですが、
これくらい差が出ることを覚えておいてください。
もうどちらに投資をしたほうがよいかは明確ですね。
※引用:モーニングスター
マイスタート | 投資のソムリエ | |
1年 | ▲0.97% | 4.85% |
3年 | – | 3.50% |
5年 | – | 2.48% |
10年 | – | – |
※2020年7月時点
最大下落率は?
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』に
投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを
知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではリスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の
最大下落率を見てみましょう。
最大下落率は2020年2月~4月の3カ月間で3.93%下落しています。
この下落率であれば、リスクを恐れる投資家でも気軽に投資が
できますね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲2.98% |
3カ月 | ▲3.93% |
6カ月 | ▲3.44% |
12カ月 | ▲0.97% |
※2020年7月時点
積立NISAとiDeCoの対応状況は?
積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。
そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。
積立NISA | iDeCo |
× | × |
※2020年7月時点
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで
一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流入しているということは、それだけこのファンドを購入している人が
多いということなので、評判が良いということです。
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』は設定から
数カ月は資金流入が続きましたが、パフォーマンスの悪化とともに、
流出超過となりました。
しかし2019年に入り、パフォーマンスが回復してきたことで、
資金が流入超過となっています。つまり、また評判がよくなって
きているということです。
正直なぜここまで人気が出ているのか私個人としては理解に
苦しみます。
※引用:モーニングスター
リスクコントロール世界資産分散ファンド『マイスタート』の評価まとめと今後の見通し
このブログではもう何度もお話ししていますが、8資産に
分散して投資ができて、かつ運用のプロがタイミングよく
資産の比率を変えてくれると聞くと、とてもお得感を
感じてしまいます。
しかし、運用業界にいればわかりますが、そんなタイミング
よく資産構成比率を変えることはできません。
今回のコロナショックでそれが明るみになりましたが、
リスクを抑えた運用を投資家に約束した結果、現金比率が
以上に高い資産構成比となっており、これによって、
本来得られた利益も取り逃がしています。
かつ投資家からすれば、信託報酬がかかってくるわけです
ので、2重の機会損失をしていることになります。
こうなってくると、リスクの制約のせいで、コロナショック
前の水準にいつごろ戻せるのかまったく目途がたちません。
結局、このファンドは、何も考えたくない(何も考えられない)
投資初心者をターゲットに耳ざわりによい言葉を並べたてて、
資金を集めているファンドと言えると思います。
不必要に高いリスクを取る必要はないと思いますが、リスクを
嫌いすぎる結果、ファンドの運用がうまくいかなくなることも
あるということです。
今、マイスタートに投資をしている投資家は少なくとも、
投資のソムリエなどの機動的なアセットアロケーションが
うまくできるファンドマネジャーが運用しているファンドに
乗り換えることをおすすめします。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点