毎月分配型のファンドでありながら、毎月資金が流入し、純資産総額が伸びているニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』。
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』には、毎月分配型と資産成長型の2種類のファンドがありますが、今日はより人気の高い毎月分配型を分析していきます。
資産成長型を保有している人や、購入を検討している人の参考になるように書いていますので、ぜひ参考にしてください。
「ラッキー・カントリーって投資対象としてどうなの?」
「ラッキー・カントリーって持ってて大丈夫なの?」
「ラッキー・カントリーより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の基本情報
投資対象は?
まず投資対象は、相対的に配当利回りの高い「株式」および「リート」を実質的な投資対象とします。
業種別手見ると、金融の比率が高く、次いで資本財・サービス、リート、と続きます。
※引用:マンスリーレポート
ファンドの仕組みは?
ファンドの運用はファンド・オブ・ファンズ方式で行い、オーストラリア株式の実質的な運用はレッグ・メイソン・アセット・マネジメント・オーストラリア・リミテッドが行います。オーストラリアの株式の運用は30年以上の実績があります。
レッグ・メイソンはフランクリン・リソーシズ・インクの傘下にあり、フランクリン・テンプルトンは米国カリフォルニア州に本部を置く独立系の運用会社グループで、世界30か国以上に拠点をもち、166兆円の運用残高がある会社です。
※引用:交付目論見書
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』は2017年~2020年頃までは1800億円程度ありましたが、現在では、780億円程度にまで減少しています。とはいえ、未だにかなり大きな規模のファンドです。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
そして、ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の実質コストは1.826%とかなり高いです。基本的には手を出してはいけないファンドですね。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.826%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.826%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の評価分析
基準価額をどう見る?
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の基準価額は直近3年間で3000円前後を推移しています。
分配金を受け取らずに運用をした場合の基準価額(青)で見ると、60%近く上昇していますので、運用はうまくいっており、運用益はほぼ分配金に充てられているということですね。
※ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の利回りはどうなっているか見てみましょう。
直近1年、3年平均利回りはは9%以上ありますので、かなり高くなっています。
ただ、5年、10年平均利回りになるにつれて、徐々に平均利回りが低下していますので、一時的に調子がいいのかもしれません。
こういう場合、他の類似ファンドとパフォーマンスを比較する必要があります。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +9.42% |
3年 | +17.31% |
5年 | +5.73% |
10年 | +4.89% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ラッキーカントリーは、バランス型ファンドの成長カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をしたいと思うので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
ラッキーカントリーは、3年を除いて下位30%程度に位置しており、他にもっとパフォーマンスが優れたファンドが多数あることを意味します。
上位●% | |
1年 | 65% |
3年 | 21% |
5年 | 79% |
10年 | 100% |
※2023年10月時点
年別の運用利回りは?
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の年別の利回りを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りだけではわからない基準価額の大きさを知ることができます。
ラッキー・カントリーの場合、株式の値動きに豪ドル円の値動きが大きく影響してくるので、パフォーマンスもかなり大きく上下します。
年間利回り | |
2023年 | +8.86%(1-9月) |
2022年 | +4.92% |
2021年 | +20.51% |
2020年 | ▲6.18% |
2019年 | +16.83% |
2018年 | ▲19.59% |
2017年 | +10.22% |
2016年 | +8.17% |
2015年 | ▲5.90% |
2014年 | +17.01% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略最大下落率はどれくらい?
投資をするにあたって、どの程度下落する可能性があるのかは知っておきたいポイントです。
標準偏差からもある程度は想定できるものの、やはり実際に下落したかが一番参考になります。
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』は2020年1~3月の3カ月間で▲37.92%下落しています。
コロナショックの影響をかなり大きく受けたと言えますね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲31.49% |
3カ月 | ▲37.92% |
6カ月 | ▲35.26% |
12カ月 | ▲34.38% |
※2023年10月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲121円 | 360円 | 66% |
※2022/10/18~2023/10/17
ラッキーカントリーの直近1年間の分配健全度は66%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。つまり、自分が投資したお金の一部がただ戻ってきているだけです。
後述しますが、分配金利回りがかなり高いので、分配健全度はさらに悪化していくのは間違いないです。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | +9.42% | 11.7% |
3年 | +17.31% | |
5年 | +5.73% | |
10年 | +4.89% |
※2023年10月時点
ラッキーカントリーの分配金利回りは11%と高いので、毎月大きな分配金を受け取ることができます。
ただ、ファンドの運用利回りをはるかに上回る水準で分配がなされているため、あなたが受け取っている分配金のほとんどはあなたが投資した資金が戻ってきているに過ぎないということです。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
ラッキーカントリーの分配金余力は、20カ月程度ありますが、あまり減配まで猶予はないと言えますね。
少しの間は持ちそうですが、分配金利回りが異常に高い割に、ファンドの運用が全くうまくいっていないことから考えると、急速に分配金余力が減っていく可能性が高いです。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
121期 | 30円 | 710円 | 24.7カ月 |
122期 | 30円 | 703円 | 24.4カ月 |
123期 | 30円 | 696円 | 24.2カ月 |
124期 | 30円 | 686円 | 23.9カ月 |
125期 | 30円 | 679円 | 23.6カ月 |
126期 | 30円 | 672円 | 23.4カ月 |
127期 | 30円 | 662円 | 23.1カ月 |
128期 | 30円 | 655円 | 22.8カ月 |
129期 | 30円 | 645円 | 22.5カ月 |
130期 | 30円 | 635円 | 22.2カ月 |
131期 | 30円 | 628円 | 21.9カ月 |
132期 | 30円 | 620円 | 21.7カ月 |
※引用:最新運用報告書
評判はどう?
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけこのファンドを購入している人が多いということなので、評判が良いということです。
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』は2014年以降、毎月資金が流入しており、2017年には大きく人気に火が付きました。
パフォーマンスが優れないにも関わらず資金が流入し続けていたのは、見かけの分配金利回りが高いことによる影響です。ただ、2020年末からついに資金が流出超過に転じており、人気が落ち始めていることを表しています。
まだラッキーカントリーを保有している投資家ははやめに手を引くべきでしょう。
※ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと思います。
そこで、NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2023年10月時点
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド『ラッキー・カントリー』の評価まとめと今後の見通し
コロナショックで大きく下落した株価ですが、経済活動再開の再開に伴う景気の期待が高まり、投資家のリスク回避姿勢が和らいだことから、株価は堅調に推移しています。
ラッキーカントリーのパフォーマンスもかなり堅調に推移したため、2020年~2021年にかけては、分配金の多くをファンドの収益から支払うことができています。
しかし、ラッキーカントリーは分配金利回りが10%以上あり、ファンドの運用利回りは平均すると5%もないので、今の状況が長く続くことはまずありません。
分配金目当ての投資家が最近までは流入してきていましたが、その人たちが受け取っている分配金の大半は自分が投資した元本がただ戻ってきているだけです。
今後は再びタコ足配当の状態に戻ることが予想されますので、基準価額の下落と減配は間違いないでしょう。
ファンド自体の運用がそこそこうまくいっているのであれば、検討の余地があるかもしれませんが、パフォーマンスも酷い状態で、分配金もタコ足配当では、投資をするメリットが何1つないと言えます。
もし今、ラッキーカントリーを保有している人は、早急に他の銘柄に入れ替えるべきです。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点