三菱UFJ国際投信が出しているつみたてNISA向けのファンドには3種類あり、一つは以前からある「eMAXISシリーズ」、もう一つが超低コストでネット証券向けの「eMAXIS Slimシリーズ」、それから金融機関で相談できる「つみたてんとうシリーズ」があります。
ベンチマークは同じなので、あとはコストの差になるのですが、今日はこの「つみたてんとうシリーズ」から、米国株式に投資するつみたて米国株式(S&P500)を独自の目線で分析したいと思います。
果たして、つみたて米国株式(S&P500)とはどのようなファンドなのか、徹底分析していきます。
「つみたて米国株式(S&P500)って投資対象としてどうなの?」
「つみたて米国株式(S&P500)って持ってて大丈夫なの?」
「つみたて米国株式(S&P500)より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
つみたて米国株式(S&P500)の基本情報
投資対象は?
つみたて米国株式(S&P500)の投資対象は、米国の株式です。S&P500(配当込み、円ベース)に連動する投資成果を目指します。
つみたて米国株式(S&P500)の現在の組入銘柄数は503銘柄で構成されており、組入上位10銘柄は以下のようになっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
つづいて、つみたて米国株式(S&P500)の純資産総額を見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができませんし、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
つみたて米国株式(S&P500)の純資産総額は、現在約180億円です。規模としては、そこまで大きいわけではありませんが、毎年着実に純資産総額を増やしており、人気があります。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託を運用する際には、購入時手数料や信託報酬以外にも、実際にはコストがかかっています。具体的には、株式売買手数料や有価証券取引税、印刷費用などが該当します。
これを実質コストと言いますが、実質コストが信託報酬よりもかなり高くなっていることもありますので、必ず事前に確認しておいたほうがよいポイントです。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
つみたて米国株式(S&P500)の実質コストは0.235%となっており、インデックスファンドの中でも割安な水準です。ただし、コスト最安値はファンドは0.1%を切っていますので、最安値競争からは少し遅れをとっています。
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 0.22%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 0.235%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
つみたて米国株式(S&P500)の評価分析
基準価額をどう見る?
つみたて米国株式(S&P500)の基準価額を見てみましょう。
2022年はほぼ横ばいでしたが、2023年に大きく上昇しています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
それでは、つみたて米国株式(S&P500)の運用実績を見ていきます。
直近1年間の利回りは9.07%となっています。3年平均利回りも20%を超えており、好調のようです。
ただし、この時点で良し悪しを判断するのは時期尚早です。他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしましょう。
平均利回り | |
1年 | +9.07% |
3年 | +23.05% |
5年 | ー |
10年 | ー |
※2023年11月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内中小型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
つみたて米国株式(S&P500)は、国際株式・北米カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同カテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
利回りが良く見えても、実は同カテゴリー内では、ランキングが低かったということがよくあります。
つみたて米国株式(S&P500)は、全期間上位35%以内にランクインしており、インデックスファンドにしてはかなり優秀です。
上位●% | |
1年 | 34% |
3年 | 20% |
5年 | ー |
10年 | ー |
※2023年11月時点
年別のパフォーマンスは?
つみたて米国株式(S&P500)の年別の利回りを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2022年はマイナスですが、2021年、2023年が大きなプラスなので、これだけプラスが出ていれば文句はないでしょう。
年間利回り | |
2023年 | +25.63%(1-9月) |
2022年 | ▲6.20% |
2021年 | +44.35% |
※2023年11月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンス比較
つみたて米国株式(S&P500)に投資をするかを考える上で、超低コストで投資ができるインデックスファンドとパフォーマンスの比較は必須です。
パフォーマンスが大きく劣るようであれば、わざわざ高いコストを支払ってまで投資をする価値がないからです。
そこで、今回は、北米株で構成されているeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
ベンチマークが同じなので、ほぼ同じ結果になりますが、コスト分だけ、つみたて米国株式(S&P500)のほうがパフォーマンスで負けてしまっています。
より長期で見ても、同じ結果ですので、もしどちらのファンドにも投資ができるのであれば、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を選択するべきです。
年平均利回り | つみたて米国株式(S&P500) | slim S&P500 |
1年 | +9.07% | +9.20% |
3年 | +23.05% | +23.20% |
5年 | ー | +17.05% |
10年 | ー | ー |
※2023年11月時点
類似ファンドとのパフォーマンス比較
つみたて米国株式(S&P500)に投資をするかを検討するのであれば、アクティブファンドともパフォーマンスを比較しておきましょう。
投資信託は6000本以上ありますので、もっと優れたファンドが見つかるかもしれません。
今回は、北米ファンドで何度も優秀ファンド賞を受賞をしたことがあるアライアンス・バーンスタインの米国成長株投信Bコースと比較をしてみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、つみたて米国株式(S&P500)がパフォーマンスで上回っています。
より長期のパフォーマンスだと、米国成長株投信もかなり強いのですが、3年程度の比較だと、、つみたて米国株式(S&P500)のほうに分があるようです。
年平均利回り | つみたて米国株式(S&P500) | 米国成長株投信 |
1年 | +9.07% | +15.21% |
3年 | +23.05% | +18.02% |
5年 | ー | +18.46% |
10年 | ー | +17.44% |
※2023年11月時点
最大下落率は?
投資信託は最低でも5~10年は投資をする気でなければ、投資をする意味がありませんが、その最大の障壁となりえるのが、資産の減少です。
特に20%や30%の下落相場を始めて経験すると、資産の減少額に耐えきれなくなり、本来手放すべきタイミングではないときに慌てて売却してしまいがちです。
そのため、事前にどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
それでは、つみたて米国株式(S&P500)の最大下落率を調べてみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲7.13% |
3カ月 | ▲9.06% |
6カ月 | ▲5.83% |
12カ月 | ▲6.20% |
※2023年11月時点
つみたて米国株式(S&P500)の最大下落率は2022年11月~2013年1月で▲9.06%となっています。まだ運用期間が短いこともあり、大きな下落は経験していません。株式ファンドであれば、少なくとも30%程度の下落は覚悟する必要がありますね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
つみたて米国株式(S&P500)の評判を確認する上で、毎月の資金の流出入が役立ちます。
資金流入が多くなっていれば、人気が出てきているファンドであるとわかりますし、流出が続いているようであれば、評判が悪くなっているファンドと言えます。
それでは、つみたて米国株式(S&P500)の評判を見てみましょう。
設定来、流入超過が続いており、流入額も増加しています。パフォーマンスも好調なので、評判も非常によいですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
つみたて米国株式(S&P500)はNISAのみ取り扱いがありますので、投資をする場合は積極的にこの制度を活用していきましょう。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2023年11月時点
つみたて米国株式(S&P500)の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
つみたて投資をするのであれば、S&P500に連動するインデックスファンドは保有しておいて損はありません。中長期でみても、着実に成長している指数なので、長期保有をしっかり続けることができれば間違いないでしょう。
つみたて米国株式は金融機関向けの商品で、対面でじっくり相談しながら購入してもらうという目的があるため、信託報酬がeMAXISSlim米国株式(S&P500)より割高になっています。
そのため、自分でコスト面も考慮してネット証券で買うなら、eMAXISSlim米国株式(S&P500)がいいですし、、金融機関の窓口等で購入するのであれば、つみたて米国株式(S&P500)がおすすめです。
とりあえず、下手なアクティブファンドに手を出すくらいであれば、まず最初に自分のポートフォリオに入れることを検討するべき1本です。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点