オーストラリア株式ファンドや債券ファンド、REITなど、それぞれ投資対象を絞り込んで設定されたファンドは数多く存在します。
しかし、株式ファンドと債券ファンドを約50%ずつ保有しているニッセイオーストラリア利回り資産ファンド『愛称:豪州力』のようなファンドはあまりありません。
豪州力には、毎月分配型と資産成長型の2種類がありますが、今日はより人気の高い毎月分配型を詳しく見ていきたいと思います。
「豪州力って投資対象としてどうなの?」
「豪州力って持ってて大丈夫なの?」
「豪州力より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
ニッセイ オーストラリア利回り資産ファンド『愛称:豪州力』の基本情報
投資対象は?
豪州力の投資対象は、「LM・オーストラリア債券ファンド」及び「LM・オーストラリア高配当ファンド」を通じて、豪ドル建ての公社債及び株式、REITに投資をしていきます。
豪州力では、債券と株式・REITの投資割合が50:50になるように投資していきます。
債券ファンドでまず確認しなければならないのが、組入られているファンドの格付ですが、平均格付がAA-となっており、BBB以上の格付の債券しか含まれていませんので、デフォルトのリスクは心配しなくて良さそうです。
※引用:マンスリーレポート
続いて、債券ファンドの中身を見てみると、国債、州政府債、政府保証債、社債とバランスよく分散投資されています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、豪州力の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額が小さいと運用が効率的に行えず、余計なコストが発生したり、運用会社も運用に力を入れないため、パフォーマンスが優れないといったデメリットが発生します。
豪州力は、常にファンドの収益力より過剰な分配を繰り返しているのですが、2016年頃は分配金利回りの高さに目がくらんだ投資家がなだれ込みました。
ただ、それ以降は減配等により旨味が減ったため、投資家離れが進み、現在は、80億円程度の規模まで縮小しています。この規模だと少し心許ないですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
豪州力の実質コストは1.719%となっています。購入時手数料を考えると、初年度はかなり高い手数料を支払うことになります。くれぐれも投資する際は慎重に判断してください。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.716%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.719%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ニッセイ オーストラリア利回り資産ファンド『愛称:豪州力』の評価分析
基準価額をどう見る?
豪州力の基準価額(黄線)は、直近3年間で7%ほど下落しています。
分配金を支払わずに運用した場合の分配金再投資基準価額(青線)を見ると、3年間で30%程度は上昇しているので、ファンドの運用自体はプラスで運用できているようです。
ただし、過剰な分配が行われているため、基準価額が下落しているということです。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
豪州力の直近1年間の利回りは、+6.43%です。3年平均利回りも10.01%で、5年平均利回りも4.43%のプラスとなっています。
高い利回りではありませんが、手堅くプラスのリターンを得たい人にはちょうどいいくらいのリスクのファンドかもしれません。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +6.43% |
3年 | +10.01% |
5年 | +4.43% |
10年 | +3.49% |
※2023年10月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
せっかく投資をするのであれば、同じカテゴリー内でも、優れたファンドに投資をするべきです。豪州力は株式と債券の比率が50:50であることから、バランス(安定成長)カテゴリーに属しています。
このカテゴリー内でのランキングを確認すると、かなりばらつきがあります。1年平均は平均以下ですが、3年平均は上位10%にランクインしています。全体としては悪くないパフォーマンスとなっています。
上位●% | |
1年 | 57% |
3年 | 9% |
5年 | 23% |
10年 | 71% |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
豪州力の年別の運用パフォーマンスも見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2015年、2018年、2022年はマイナスとなっていますが、それ以外の年では手堅くプラスで終わっています。決して高い利回りではないですが、毎年プラスで運用できているというだけでも投資家からは安心材料になりますね。
年間利回り | |
2023年 | +8.52%(1-9月) |
2022年 | ▲0.09% |
2021年 | +10.74% |
2020年 | +1.36% |
2019年 | +10.46% |
2018年 | ▲14.14% |
2017年 | +8.80% |
2016年 | +3.18% |
2015年 | ▲7.21% |
2014年 | +14.78% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは最大下落率は?
投資を検討するうえで、標準偏差などから、価格変動の範囲をある程度は予想できますが、やはり実際に下落した度合いをみたほうがイメージがわきます。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲20.18% |
3カ月 | ▲25.35% |
6カ月 | ▲22.52% |
12カ月 | ▲23.06% |
※2023年10月時点
豪州力は2020年1月~3月までに最大▲25.35%下落しました。リターンがそこまで期待できない中で、25%以上のマイナスとなると、もとの水準まで戻すのに相当の時間を要することが容易に想像できます。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲311円 | 420円 | 26% |
※2022/10/20~2023/10/20
豪州力の直近1年間の分配健全度は26%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部、ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。
豪州力は分配健全度が26%なので、あなたが直近1年間で受け取った分配金の74%はファンドの運用益以外から支払われているということです。
分配金を受け取って嬉しい気持ちになっているかもしれませんが、実態はあなたの投資元本等から取り崩されているだけですね。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +6.43% | 11.8% |
3年 | +10.01% | |
5年 | +4.43% | |
10年 | +3.49% |
※2023年10月時点
豪州力の分配金利回りは11.8%とかなり高めの設定となっています。明らかにファンドの運用利回りよりも高いですので、あなたが受け取っている分配金の大半が、あなたの投資資金から支払われているということです。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気をつけてほしいと思います。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
豪州力は直近で減配していますが、それでも分配金余力はすでに13カ月程度しかありませんので、ここ1年くらいで、また減配されるでしょう。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
115期 | 40円 | 592円 | 15.8カ月 |
116期 | 40円 | 571円 | 15.3カ月 |
117期 | 40円 | 546円 | 14.7カ月 |
118期 | 40円 | 522円 | 14.1カ月 |
119期 | 40円 | 501円 | 13.5カ月 |
120期 | 40円 | 480円 | 13カ月 |
121期 | 40円 | 456円 | 12.4カ月 |
122期 | 40円 | 435円 | 11.9カ月 |
123期 | 40円 | 410円 | 11.3カ月 |
124期 | 40円 | 386円 | 10.7カ月 |
125期 | 30円 | 374円 | 13.5カ月 |
126期 | 30円 | 362円 | 13.1カ月 |
※引用:運用報告書
評判はどう?
豪州力の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。資金が流入しているということは、それだけ豪州力を購入している人が多いということなので、評判がよくなっているということです。
豪州力は、2018年以降、毎月資金が流出しています。分配金利回りから考えると、タコ足配当と知らずに、無知な投資家がもっと集まってきてもおかしくないと思いますが、豪州力に関しては、投資家が集まってきていないようです。
これだけファンドのパフォーマンスに見合わない分配をしていれば当然の結果ですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
豪州力のNISAやiDeCoの対応状況ですが、NISAのみ対応しています。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2023年10月時点
ニッセイ オーストラリア利回り資産ファンド『愛称:豪州力』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
改めてになりますが、ファンドの運用利回りと分配金利回りは全くの別物です。運用利回り10%と言えば、100万円を投資した場合、年10万円の運用益を受け取ることができます。
一方で、分配金利回り10%という場合は違います。仮にファンドの運用利回りが3%しかなくても分配金利回りを10%にすることはできるのです。
その結果、100万円投資をして、ファンドの運用益は3万円しかないにもかかわらず、あなたは10万円の分配金を受け取ることになります。
では、運用益と分配金の差額の7万円はどこから出てきているのかと言えば、あなたの投資した元本の100万円から支払われているのです。つまり、分配金利回りがいくら高くても、ファンドの運用利回りが低ければ、まったく意味がないということです。
毎月分配型ファンドは私はそもそもおすすめはしませんが、それでも投資をしたいという場合、ファンドの選定基準は分配金利回りが高いか低いかではありません。
ファンドの運用利回りがちゃんとプラス(大きいほど良い)で、運用利回りの範囲内か、少し超える程度で分配金を出しているファンドを選んでください。
豪州力の場合、明らかに分配金利回りがファンドの運用利回りよりも高いため、今後、この状況が大きく改善することはまずありえません。
もともと私は毎月分配型のファンドはおすすめしますが、どうしても分配金を受け取りたいという人は、少なくともファンドの運用利回りが高いファンドを選んでください。
アライアンス・バーンスタインの米国成長株投信のようなファンドを検討するとよいと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点