2050年に世界の多くが脱炭素を宣言しており、目標を達成するために技術を駆使し、社会に大きな変革をもたらすべく動き始めています。
そんな脱炭素社会の実現に貢献する企業に投資をするのが、野村アセットマネジメントの脱炭素ジャパンです。
果たして、脱炭素ジャパンとはどのようなファンドなのか、今日は徹底分析していきます。
「脱炭素ジャパンって投資対象としてどうなの?」
「脱炭素ジャパンって持ってて大丈夫なの?」
「脱炭素ジャパンより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
脱炭素ジャパンの基本情報
脱炭素社会の実現に向けた世界各国の取り組み
世界の多くが2050年の脱炭素を宣言し、目標達成のために、技術を駆使して、社会に大きな変革を起こすことが求められています。
二酸化炭素の二大排出国である中国・米国も脱炭素に向け動き始めており、いよいよ機運が高まりつつあります。
また脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの普及や水素などへのエネルギー転換、エネルギー効率の向上なども必要となり、世界でビジネスチャンスが拡大しています。
※引用:販売資料
投資対象は?
脱炭素ジャパンの投資対象は、国内の株式です。投資対象は「脱炭素社会の実現に貢献する企業」となっており、脱炭素関連ビジネスを展開する企業と脱炭素のための取り組みを行う企業が対象となります。
※引用:販売資料
市場別の投資比率を見ると、プライム市場の銘柄が9割ということで、大型株の比率が高いようです。また業種別の構成比率をいると、化学の比率が高くなっていますね。
※引用:マンスリーレポート
脱炭素ジャパンの現在の組入銘柄数は49銘柄で構成されており、比較的絞り込まれています。組入上位10銘柄は以下のようになっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
つづいて、脱炭素ジャパンの純資産総額を見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、監査費用や印刷費用、その他諸経費が相対的に比率が高くなるので、実質コストが高くなりがちです。また会社としてもファンドの運用に人員を割けなくなるため、パフォーマンスが悪化する原因にもなります。
脱炭素ジャパンの純資産総額は、現在約416億円です。パフォーマンスが優れなかったこともあり、400億円近辺をずっと推移しています。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託を運用する際には、購入時手数料や信託報酬以外にも、実際にはコストがかかっています。具体的には、株式売買手数料や有価証券取引税、印刷費用などが該当します。
これを実質コストと言いますが、実質コストが信託報酬よりもかなり高くなっていることもありますので、必ず事前に確認しておいたほうがよいポイントです。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
脱炭素ジャパンの実質コストは1.642%となっており、インデックスファンドと比べると割高です。何より購入時手数料も3.3%と高くなっていて、初年度は5%程度のコストが最低でもかかると考えておいてください。
購入時手数料 | 3.3%(税込)以内 |
信託報酬 | 1.584%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.642%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
脱炭素ジャパンの評価分析
基準価額をどう見る?
脱炭素ジャパンの基準価額を見てみましょう。
2021年から2022年にかけて下落しており、2023年に大きく上昇しました。ただ、上昇幅は限られており、あまり優れたパフォーマンスとは言えないです。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
それでは、脱炭素ジャパンの運用実績を見ていきます。
直近1年間の利回りは26.63%となっています。一見すると非常に高い利回りに見えます。
ただし、この時点で良し悪しを判断するのは時期尚早です。他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしましょう。
平均利回り | |
1年 | +26.63% |
3年 | - |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内中小型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
脱炭素ジャパンは、国内中型バリューカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同カテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
利回りが良く見えても、実は同カテゴリー内では、ランキングが低かったということがよくあります。
脱炭素ジャパンは、20%の利回りでも、下位10%に入っており、これでは投資をする気になりません。
上位●% | |
1年 | 94% |
3年 | - |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
脱炭素ジャパンの年別の利回りを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
まだ運用期間が短いので、評価しづらいですが、現時点ではあえて投資する理由がないです。
年間利回り | |
2023年 | +22.33%(1-9月) |
2022年 | ▲10.54% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
脱炭素ジャパンに投資をするかを考える上で、超低コストで投資ができるインデックスファンドとパフォーマンスの比較は必須です。
パフォーマンスが大きく劣るようであれば、わざわざ高いコストを支払ってまで投資をする価値がないからです。
そこで、今回は、脱炭素ジャパンと日経225に連動するニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
ほぼ全期間において、脱炭素ジャパンはパフォーマンスで負けてしまっています。
この結果を見る限りはあえて高いコストを支払ってまで、脱炭素ジャパンに投資をするメリットはないですね。
年平均利回り | 脱炭素ジャパン | ニッセイ日経 225 |
1年 | +26.63% | +25.03% |
3年 | - | +13.02% |
5年 | - | +7.56% |
10年 | - | +9.99% |
※2023年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
脱炭素ジャパンに投資をするかを検討するのであれば、アクティブファンドともパフォーマンスを比較しておきましょう。
投資信託は6000本以上ありますので、もっと優れたファンドが見つかるかもしれません。
今回は、国内小型株カテゴリーで中長期で高いパフォーマンスを残している東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンとパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
ほぼ全期間において、脱炭素ジャパンのほうがリードしています。ただ、まだ運用期間が短いこともあり、ここだけでは判断できないですね。
年平均利回り | 脱炭素ジャパン | 東京海上・ジャパン・オーナーズ株式 |
1年 | +26.63% | +6.88% |
3年 | - | +1.77% |
5年 | - | +6.18% |
10年 | - | +15.63% |
※2023年10月時点
最大下落率は?
投資信託は最低でも5~10年は投資をする気でなければ、投資をする意味がありませんが、その最大の障壁となりえるのが、資産の減少です。
特に20%や30%の下落相場を始めて経験すると、資産の減少額に耐えきれなくなり、本来手放すべきタイミングではないときに慌てて売却してしまいがちです。
そのため、事前にどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
それでは、脱炭素ジャパンの最大下落率を調べてみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲7.00% |
3カ月 | ▲5.97% |
6カ月 | ▲11.23% |
12カ月 | ▲12.77% |
※2023年10月時点
脱炭素ジャパンの最大下落率は2021年10月~2022年9月で▲12.77%となっています。まだ運用期間が短いので、このくらいの下落で済んでいます。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
脱炭素ジャパンの評判を確認する上で、毎月の資金の流出入が役立ちます。
資金流入が多くなっていれば、人気が出てきているファンドであるとわかりますし、流出が続いているようであれば、評判が悪くなっているファンドと言えます。
それでは、脱炭素ジャパンの評判を見てみましょう。最初はコンセプトが素晴らしかったこともあり、流入が続いていましたが、パフォーマンスが伴わなかったこともあり、すでに2023年には毎月流出超過となっています。
インデックスファンドと比較をしても、劣っているので、評判が落ちるのは仕方ないでしょう。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
脱炭素ジャパンはNISAのみ取り扱いがありますので、投資をする場合は積極的にこの制度を活用していきましょう。
NISA | iDeCo |
○ | × |
※2023年10月時点
脱炭素ジャパンの評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
アクティブファンドに投資をするのであれば、最低限、インテックスファンドよりもパフォーマンスが上回っている必要があります。
しかし、運用期間が短いとはいえ、脱炭素ジャパンはパフォーマンスでインデックスファンドに負けてしまっています。
脱炭素ジャパンのようにコンセプトだけは多くの投資家から評判が良く、ただ実際に運用が始まると全くダメだったというテーマ型のファンドは本当によくあります。
特にESGや社会貢献を謳ったファンドはこの傾向が強いです。
運用期間がまだ短いので、投資を検討しているのであれば、もう少し長い運用期間をモニタリングしてから投資判断するほうがいいです。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点