今後安定的な配当が続くであろう企業に投資をすることで、安定的な分配金を確保する戦略のDIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『愛称:ハッピーインカム』。
果たして運用はうまくいっているのでしょうか?
ハッピーインカムには為替ヘッジ無/有の2種類がありますが、今日はより人気の高い為替ヘッジ無を見ていきたいと思います。
「ハッピーインカムって投資対象としてどうなの?」
「ハッピーインカムって持ってて大丈夫なの?」
「ハッピーインカムより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
DIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『ハッピーインカム』の基本情報
投資対象は?
ハッピーインカムの投資対象は、日本を除く世界の好配当株式に投資し、安定的な配当収入の確保と中長期的な値上がり益の確保を目指します。
ハッピーインカムの投資対象は大きく安定好配当株、成長好配当株、潜在好配当株の3つに分類し、投資していきます。
※引用:交付目論見書
国別の構成比率を見てみると、1位がアメリカで約50%、2位のドイツが約12%、3位の英国が約10%となっています。ある程度成熟したマーケットである北米と欧州が中心となっている点にも特徴があると言えますね。
※引用:マンスリーレポート
業種は特に絞っていませんので、さまざまな分野に分散投資されていることがわかります。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、ハッピーインカム の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
ハッピーインカム の純資産総額は、約221 億円となっており、純資産の規模としては、問題ありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ハッピーインカムの実質コストは1.25%となっており、かなり高いというわけではありませんが、1%を超えていますので、割高です。
初年度の手数料を考えると、かなり高い印象ですが、あとはパフォーマンス次第といったところです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.21%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.25%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
DIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『ハッピーインカム』の評価分析
基準価額をどう見る?
ハッピーインカムの基準価額は、直近3年間で、10%ほど上昇しています。
分配金を受け取らずに再投資して運用したときの基準価額(青線)も、3年間で50%ほど上昇していますので、分配金を受け取りつつ、さらに投資元本も増えるという理想の運用となっています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、ハッピーインカムの利回りを見てみましょう。
直近1年間の利回りは21.25%となっています。どの期間の利回りも7%以上ありますので、手堅く運用出ているような印象を受けます。
ただ、この時点で投資判断するのは時期尚早です。他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断してください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +21.25% |
3年 | +17.86% |
5年 | +8.37% |
10年 | +7.68% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ハッピーインカムは日本を除く海外株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
ハッピーインカムはすべての期間で平均以下の順位なので、配当は安定しているかもしれませんが、基準価額の上昇は期待できないということです。
上位●% | |
1年 | 68% |
3年 | 73 % |
5年 | 89% |
10年 | 84% |
※2023年10月時点
年別運用パフォーマンスは?
ハッピーインカムの年別の運用パフォーマンスを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
マイナスの年もありますが、10%以上のマイナスの年がほぼないので、安心して投資できそうです。ただし、カテゴリー内でのパフォーマンスは平均以下ですので、注意してください。
年間利回り | |
2023年 | +13.42(1-9月) |
2022年 | +4.90% |
2021年 | +28.59% |
2020年 | ▲8.15% |
2019年 | +21.44% |
2018年 | ▲14.96% |
2017年 | +10.87% |
2016年 | +1.30% |
2015年 | ▲4.52% |
2014年 | +17.11% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
ハッピーインカムに投資をするのであれば、より低コストで投資ができるインデックスファンドとのパフォーマンスは比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、ハッピーインカムと同じく世界の先進国株式に投資ができるeMAXIS Slim先進国株式インデックスと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、eMAXIS Slim先進国株式インデックスが勝っており、これでは、高いコストを支払ってまで、投資をするメリットが感じられません。
より長期の利回りでみても同じ結果ですね。
ハッピーインカム | Slim 先進国株 | |
1年 | +21.25% | +24.67% |
3年 | +17.86% | +22.16% |
5年 | +8.37% | +13.93% |
10年 | +7.68% | - |
※2023年10月時点
最大下落率は?
投資する上で、ファンドがどの程度、下落する可能性があるのかを事前に知っておくことは非常に重要です。
もちろん標準偏差を使って、求めることはできますが、やはり実際にどの程度下落したのかを見ておいたほうがイメージがわきます。
ハッピーインカムは2020年1月~2020年3月までに最大23.97%下落しました。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲16.52% |
3カ月 | ▲23.97% |
6カ月 | ▲17.05% |
12カ月 | ▲17.66% |
※2023年10月時点
ファンドによっては、コロナショックが最大下落率を記録していないことも多いですが、ハッピーインカムはかなり影響を受けたことがわかりますね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
223円 | 540円 | 141% |
※2022/10/25~2023/10/23
ハッピーインカムの直近1年間の分配健全度は141%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われており、100%以上であるということは、少なくとも直近1年間はファンドの収益からすべての分配金が支払われていることを意味しています。
ハッピーインカムは少なくとも直近1年間の分配金はすべてファンドの収益から支払われているようですね。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。分配金利回りは1年間で受け取った分配金の合計金額を基準価額で割ることで計算できます。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +21.25% | 6.6% |
3年 | +17.86% | |
5年 | +8.37% | |
10年 | +7.68% |
※2023年10月時点
ハッピーインカムの分配金利回り6.6%なので、運用利回りを考えると妥当な水準となっています。
この利回りであれば、ファンドの運用益からでも支払いができそうな水準です。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気をつけてほしいと思います。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
ハッピーインカムの分配金余力は20カ月程度でしたが、直近では50カ月を超える水準まで回復しています。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
149期 | 45円 | 2,342円 | 53.0カ月 |
150期 | 45円 | 2,320円 | 52.6カ月 |
151期 | 45円 | 2,284円 | 51.8カ月 |
152期 | 45円 | 2,253円 | 51.1カ月 |
153期 | 45円 | 2,319円 | 52.5カ月 |
154期 | 45円 | 2,292円 | 51.9カ月 |
155期 | 45円 | 2,263円 | 51.3カ月 |
156期 | 45円 | 2,234円 | 50.6カ月 |
157期 | 45円 | 2,214円 | 50.2カ月 |
158期 | 45円 | 2,265円 | 51.3カ月 |
159期 | 45円 | 2,358円 | 53.4カ月 |
160期 | 45円 | 2,610円 | 59.0カ月 |
評判はどう?
ハッピーインカムの評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけハッピーインカムを購入している人が多いということなので、評判がよくなっているということです。
ハッピーインカムは、2020年ごろまで、ほぼ毎月資金が流入しており、毎月決算型ファンドにしては、とても人気のあるファンドとなっていました。
これも異常な分配を続けてきたからなのですが、2020年以降は毎年減配を続けたことで、分配利回りは適正な水準に戻ってきましたが、その分、毎月資金が流出するようになってしまいました。当然と言えば、当然の結果です。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
ハッピーインカムのNISAやiDeCoの対応状況ですが、残念ながらどちらも対応していません。
NISA | iDeCo |
× | × |
※2023年10月時点
DIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『ハッピーインカム』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
まず理解しておいてほしいのは、株式の配当と投資信託の分配金を同じ感覚で考えないことです。
株の場合は、配当利回りが高いと利益を投資家にたくさん還元してくれる投資家想いの会社ということになりますが、投資信託の場合は一概にそうとは言えません。運用がどれだけうまくいっていなかったとしても、基準価額が下がってきてしまうと、自動的に分配金利回りは上昇します。
これを理解せず分配金利回りの高いファンドに投資をしてしまうと、分配金は受け取れたとしても、それは、あなたが投資した元本がただ戻ってきているだけの可能性も高いです。
ハッピーインカムのようなタコ足配当ファンドは、分配金がファンドの儲けなのか、自分の元本が戻ってきただけなのか把握することが難しく、とりあえず分配金が出ているからと安心していると痛い目をみます。
ハッピーインカムは少なくとも直近ではかなり状況が改善しているので、毎月分配型の投資信託の中ではかなり健全な運用ができていると言えます。
ただし、根本的にインデックスファンドにパフォーマンスで負けていることを考えると、あえて投資しようとは思えませんね。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点