近年、インターネットやコンピューターなどの情報技術は、生活の隅々にまで浸透し、すべての産業における共通の基盤となっています。
その情報技術における革新的な変革を起こしうる企業に着目したのが三菱UFJ国際のグローバル・スマート・イノベーション年2回決算型『愛称:iシフト』です。
今日は、このiシフトについてて徹底分析していきます。
「iシフトって投資対象としてどうなの?」
「iシフトって持ってて大丈夫なの?」
「iシフトより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
グローバル・スマート・イノベーション(年2回)『愛称:iシフト』の基本情報
投資対象は?
iシフトの投資対象は情報技術及びその派生分野に関連する企業のうち、革新的な技術によって今後の成長が期待される企業の株式です。
より具体的には、以下のようにIoT、AI、クラウド・コンピューティングと呼ばれる分野で今後の成長が期待される企業に投資をしていきます。
※引用:交付目論見書
iシフトの国別の構成比はアメリがが約7割で、次いで台湾、オランダとなっています。台湾やオランダの銘柄の比率が上位に来ているというのは1つ特徴です。
※引用:マンスリーレポート
iシフトの組入れ銘柄数は現在45銘柄となっており、その組入れ上位銘柄は以下のようになっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
純資産総額は投資信託を見極める際に大切なポイントとなります。
純資産総額が多い方が、ファンドマネージャーが資金を投資する際に有利であったり、他の投資家の解約の際の影響が小さくなりますので、良い投資信託と判断されます。
また純資産総額が減少しているファンドは、解約が増えているということです。さらに投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもあります。
iシフトは2021年頃に400億円の規模がありましたが、その後減少傾向となり、現在は約233億円となっています。この規模であれば特に問題ありませんね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?これを実質コストと言います。実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
信託報酬より実質コストがかなり高くなっている場合もあるので、事前に確認しておいた方が良いでしょう
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
iシフトの実質コストを見てみると、2.10%とかなり割高な設定となっています。実質的な運用を行っているティー・ロウへの支払いが嵩んでいるのが要因ですね。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.980%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 2.10%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
グローバル・スマート・イノベーション(年2回)『愛称:iシフト』の評価分析
基準価額をどう見る?
それでは、iシフトの基準価額の推移を見てみます。
基準価額が10,000円を大きく下回らないように分配をしていましたが、2022年以降はそのルールが守れないほどの下落してしまっています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、iシフトの運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは28.21%ですが、3年平均は1%台、5年平均利回りは10%近い利回りとなっています。
平均利回りにかなり変動があることから、年別の運用利回りではかなり変動があることが予想できます。
どちらにしても、他のファンドとのパフォーマンスを比較したうえで投資をするか決めましょう。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +28.21% |
3年 | +1.17% |
5年 | +9.63% |
10年 | - |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
iシフトは、日本を含むグローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
iシフトは1年・3年平均は下位10%に位置しており、パフォーマンスはかなり下の方だとわかりますね。
上位●% | |
1年 | 10% |
3年 | 94% |
5年 | 55% |
10年 | - |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
iシフトの年別のパフォーマンスを見てみます。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
全体で見ると、かなり高いパフォーマンスに見えるのですが、2022年の50%のマイナスがかなり大きく響いていますね。
50%下落してしまうと、次の年に+100%のリターン出さなければ元の水準に戻せませんので、こういう運用をされると投資しづらいです。
年間利回り | |
2023年 | +46.56%(1-9月) |
2022年 | ▲49.79% |
2021年 | 18.73% |
2020年 | 56.77% |
2019年 | 33.44% |
2018年 | ▲13.97% |
2017年 | 41.27% |
※2023年10月時点
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
iシフトに実際に投資をする前に、あえて高いコストを支払う価値があるのか、インテックスファンドのパフォーマンスと比較をしてみたいと思います。
iシフトは米国株式の比率が70%程度ありますので、今回は、同カテゴリーで非常に人気の高いeMAXISSlim先進国株式インデックスと比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、2021年の間は、iシフトが大きくアウトパフォームしていますが、2022年に入り、eMAXIS Slim 先進国株式に逆転されています。
より長期のパフォーマンスを比較しても、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスのほうが上回っていますので、あえて高いコストを支払う必要はないですね。
iシフト | slim 先進国 | |
1年 | +28.21% | +24.67% |
3年 | +1.17% | +22.16% |
5年 | +9.63% | +13.93% |
10年 | - | - |
※2023年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドに投資をするのであれば、他のアクティブファンドをパフォーマンスを比較してから投資をしても、遅くはありません。
そこで、今回は先進国株式を投資対象にアクティブ運用している大和住銀DC海外株式アクティブファンドを比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
こちらも2021年まではiシフトが大きくアウトパフォームしていますが、2022年に入り、大和住銀DC海外株式に逆転されています。
これであれば高いコストを支払ってでもiシフトに投資をする理由がありません。
iシフト | 大和住銀DC | |
1年 | +28.21% | +24.67% |
3年 | +1.17% | +13.25% |
5年 | +9.63% | +13.76% |
10年 | - | +14.90% |
※2023年10月時点
最大下落率は?
iシフトへの投資を検討するのであれば、過去にどの程度下落したことがあるのかは確認しておいて損はありません。
iシフトの最大下落率は2021年12月~2022年11月の1年間で50%程度となっています。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲23.33% |
3カ月 | ▲31.71% |
6カ月 | ▲46.24% |
12カ月 | ▲50.84% |
※2023年10月時点
リーマンショック級の下落がこのタイミングで来るとは驚きですが、銘柄を絞り込んでいるファンドというのは、運用がうまく行かないとこれくらいの下落はあると覚えておいてください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配金の推移は?
続いて、分配金の推移を見ていきましょう。
iシフトは基準価額が10,000円を下回らない程度に、その年に利益が出た分を分配金として払い出しています。
そのため、多い時では分配金利回りが50%を超えるような年もあり、タコ足配当の毎月分配型のファンドに投資をするよりもよほど健全な形で分配金を受け取れます。
分配金 | |
2023年 | 0円 |
2022年 | 0円 |
2021年 | 1,091円 |
2020年 | 5,643円 |
2019年 | 0円 |
2018年 | 1,074円 |
2017年 | 3,804円 |
※2023年10月時点
評判はどう?
それでは、iシフトの評判はどうでしょうか?
資金の流出入を見れば、投資信託の評判がわかります。解約が増えているということは、資金が流出超過となっているということであり、逆にファンドを購入する人が増えていれば、資金が流入超過となります。
iシフトは2020~2021年にかけて、一時的に資金が流入した時期もありましたが、大半の期間では資金が流出しており、評判は良くありません。パフォーマンスがこれでは当然の結果ですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
グローバル・スマート・イノベーション(年2回)『愛称:iシフト』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
iシフトは、高い分配金を支払うファンドとして、毎月分配型のリートファンドと買うよりも、かなり健全な分配金を受け取れます。
しかし、パフォーマンスだけ見れば、インデックスファンドにも負けてしまうような運用しかできておらず、運用益を狙うのであれば、eMAXIS Slim先進国株式インデックスに投資をすれば十分と言えます。
30銘柄程度に絞り込むファンドというのは調子がよければ、かなり大きなプラスになりますが、失敗するとかなり大きくマイナスになります。
本当に優れたファンドであれば、長期保有をするとインデックスファンドをアウトパフォームしてきますが、たいしたことのないファンドだと、そのままインデックスファンドを下回り続けます。
判断に自信が持てないという人は無難にインデックスファンドを保有しておけば十分ですね。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点