日本株においては、大型株より中小型株のほうが中長期で見てパフォーマンスが優れているというのは有名な話です。
そして、小型株というのは銘柄数で見ても圧倒的に数が多く、十分に企業が調査されておらず、将来の日本を担うような優れた企業が眠っています。
そんな小型株に特化したファンドが新光日本小型株ファンド『愛称:風物語』です。今日はこの風物語について独自目線で分析していきます。
こんなことがわかる
- 風物語って投資対象としてどうなの?
- 風物語って持ってて大丈夫なの?
- 風物語より良いファンドってある?
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。今日は、風物語について徹底分析していきます。
新光日本小型株ファンド『風物語』の基本情報
投資対象は?
風物語は新光小型株マザーファンドを通じて、日本の小型株に投資をしていきます。
そして、成熟産業の勝ち組企業、地味な業種変化企業、リベンジ企業、新規公開企業の4つのカテゴリーにおおきく分けて、企業を選定していきます。
風物語の組入銘柄数は77銘柄となっており、その上位銘柄を見てみましょう。
1位楽天銀行、2位MARUWA、3位メイコーとなっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、風物語の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
ファンドの純資産総額が小さいと、監査費用や印刷費用、その他諸経費が相対的に比率が高くなるので、実質コストが高くなりがちです。早期償還のリスクもありますね。
また会社としてもファンドの運用に人員を割けなくなるため、パフォーマンスが悪化する原因にもなります。
風物語の純資産総額は、現在164億6300万円程度となっています。中小型株ファンドはあまり純資産が増え過ぎると、運用に支障が出るので、この規模あれば十分でしょう。
※引用:交付目論見書
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
風物語の実質コストは1.80%となっており、非常に割高となっています。購入時手数料もかかってくるので、普通のファンドであれば、まず投資をしてはいけないファンドです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.76%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.80%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
新光日本小型株ファンド『風物語』の独自評価と分析
基準価額をどう見る?
風物語の基準価額は、2021年に大きく暴落し、2023年・2024年と上昇してはいますが、まだ2021年の高値を更新できていません。
日経平均が40,000円を大きく超える中で、中小型株はあまり恩恵を受けられていないのが残念ですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、風物語の運用実績を見てみましょう。
平均利回り | |
1年 | +4.99% |
3年 | ▲2.19% |
5年 | +10.72% |
10年 | +12.21% |
※2024年9月時点
3年平均利回りがマイナスになっているのが気になりますね。5年平均利回りは+10.72%、10年平均利回りは+12.21%と、悪くないことがわかります。
ただ、この情報だけでは判断できないので、他の類似ファンドと比較をしたうえで、投資をするようにしてください。
同カテゴリー内での利回りランキングは?
風物語は、国内小型株のグロースカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
風物語は直近1年、3年平均利回りは平均的な水準です。5年、10年の長期になると、上位20%程度に入っており、優秀な成果を出していることが分かります。
上位●% | |
1年 | 45% |
3年 | 63% |
5年 | 22% |
10年 | 12% |
※2024年9月時点
年別の運用利回りは?
風物語の年別の運用パフォーマンスを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2018年、2022年はマイナスリターンとなっていますが、それ以外の年では安定してプラスの運用ができていますね。
年間利回り | |
2024年 | +9.01%(1-6月) |
2023年 | +10.42% |
2022年 | ▲16.19% |
2021年 | +6.29% |
2020年 | +40.22% |
2019年 | +28.70% |
2018年 | ▲11.13% |
2017年 | +51.65% |
2016年 | +3.16% |
2015年 | +14.26% |
2014年 | +16.37% |
※2024年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
風物語に投資するにあたって、より低コストで運用できるインデックスファンドとのパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
今回は、日経225をベンチマークとするニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、全期間において、ニッセイ 日経225インデックスファンドが大きく負け越しています。特に2023年以降は日経平均が大きく上昇する中、中小型株中心の風物語はほぼ恩恵を受けられなかったことが影響していますね。
それではさらに長期のパフォーマンスではどうなっているでしょうか?
年平均利回り | 風物語 | ニッセイ日経 225 |
1年 | +4.99% | +20.41% |
3年 | ▲2.19% | +13.16% |
5年 | +10.72% | +15.19% |
10年 | +12.21% | +11.42% |
※2024年9月時点
10年平均利回りで見ると、風物語がやや勝っていますが、それ以外の期間では、ニッセイ 日経225インデックスファンドのほうが上回っています。
ただ、10年平均利回りで高い実績を出せることは素晴らしいのですが、1%程度の差なのであれば、どの期間でも安定感のあるニッセイ日経225インデックスファンドに投資をするほうが賢明ですね。
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、同じカテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたいと思うもの。
今回は、風物語と同じく小型株カテゴリーで非常に優秀な運用を行っている東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間で見ると、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンのパフォーマンスのほうが優れています。
より長期の利回りはどうでしょうか?
風物語 | 東京海上ジャパン | |
1年 | +4.99% | +7.89% |
3年 | ▲2.19% | +1.81% |
5年 | +10.72% | +9.33% |
10年 | +12.21% | +15.12% |
※2024年9月時点
5年平均利回りでは風物語が勝っており、10年平均利回りは東京海上ジャパンが勝っています。k
こういう場合は10年平均利回りが優れた東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンのほうが選択肢となりますね。
最大下落率は?
風物語への投資を検討するのであれば、どの程度下落する可能性があるのかは事前に知っておきたいところです。
どの程度下落するのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられるからです。
標準偏差から変動幅を予測することはできますが、やはり過去に実際にどの程度下落したことがあるのかを調べたほうがイメージしやすいので、おすすめです。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲17.31% |
3カ月 | ▲21.57% |
6カ月 | ▲22.23% |
12カ月 | ▲21.11% |
※2024年9月時点
風物語は2021年11月~2022年4月までの半年間で最大▲22.23%下落しています。小型株ファンドでこの程度の下落で済んでいるというのは悪くないですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配金の推移は?
風物語は毎年7月に分配金を出しています。2014年以前から1000円の分配を安定的に出していますが、私からすると、この程度の分配金を出すのであれば、分配金は税金もかかるので、再投資してほしいと思ってしまいます。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | |
2024年 | 1,000円 |
2023年 | 1,000円 |
2022年 | 0円 |
2021年 | 1,000円 |
2020年 | 1,000円 |
2019年 | 1,000円 |
2018年 | 1,000円 |
2017年 | 1,000円 |
2016年 | 1,000円 |
※2024年9月時点
評判はどう?
風物語の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけ風物語を購入している人が多いということなので、評判がよくなっているということです。
風物語は、2022年に入り、資金の流入超過が続いています。日経平均のパフォーマンスが優れていることから、そちらに資金が流出しているのかもしれません。
少なくとも評判はあまりよくないことが分かりますね。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
風物語は残念ながらどちらにも対応していません。
NISA | iDeCo |
× | × |
※2024年9月時点
新光日本小型株ファンド『風物語』の個人的評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
アクティブファンドに投資をする際、特に気を付けてほしいのが、常にインデックスファンドを上回るパフォーマンスのアクティブファンドは存在しないということです。
優秀なアクティブファンドは、インデックスファンドのパフォーマンスを大きく上回る年と下回る年があり、トータルで見ると、インデックスファンドをアウトパフォームします。
直近は、日経225に連動するインデックスファンドが非常に好調であることから、中小型株のアクティブファンドと比較をする魅力を感じづらいかもしれませんが、これがアクティブファンドの運用です。
目先のパフォーマンスがどうしても気になってしまうという人は、シンプルにインデックスファンドへの投資をすすめるのが良いです。
一方、私と同じようにインデックスファンドへの投資だけは面白みがないと感じる人は、今パフォーマンスが奮ってないからこそ、仕込んでおくチャンスと見ることもできますので、あなたのポートフォリオの一部に国内中小型株ファンドを組み入れることを検討してはいかがでしょうか。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点