ここ数年で一気に名前を聞くようになった「ブロックチェーン」。インターネットが世界を変えたようにブロックチェーンの技術にも様々な可能性が期待されています。
※引用:販売資料
そんなブロックチェーン・ビジネスを展開している企業に着目したのが、インベスコの世界ブロックチェン株式ファンド『愛称:世カエル』です。
今日は、この世カエルを独自目線で徹底分析していきます。
「世カエルって投資対象としてどうなの?」
「世カエルって持ってて大丈夫なの?」
「世カエルより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド『愛称:世カエル』の基本情報
投資対象は?
世カエルの投資対象は、ブロックチェーン技術を活用してビジネス展開している世界の株式です。ブロックチェーン技術をどのように活用している企業に投資をしていくのかイメージしてもらうために以下の図を見てみましょう。
例えば、物流にブロックチェーン技術を活用すると、製造、出荷、店頭、再販売まで、一連の流れをすべて追跡することが可能です。そのため、ダイヤモンドの偽物防止、医薬品の偽造防止など、食の安全管理など幅広い活用が期待されています。
※引用:販売資料
それ以外にも医療現場でブロックチェーン技術が活用されると、病院、薬局、保険会社まで個人の医療情報を集約することができます。これにより、過去の診療履歴により適切な診療がどこでも受けられるようになったり、保険金をより早く受け取れるようになります。
※引用:販売資料
このようにブロックチェーン技術の普及により既存サービスの更なる進化が期待されているわけです。
続いて、世カエルの国別の組入比率を見ていきましょう。現在は44銘柄で構成されており、1位がアメリカ、次いで日本、韓国と続いています。思った以上にアメリカの比率が低く、他の国の組入比率が高くなっているのも特徴です。
※引用:マンスリーレポート
世カエルの組入れ銘柄トップ5を見てみると、マネックスやSBIといった日本企業が上位に入っており、なかなか面白い銘柄構成になっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額が多いほうが、ファンドマネージャーが資金を投資する際に有利であったり、他の投資家の解約の際の影響が小さくなりますので、優れた投資信託と言えます。
投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
世カエルの純資産総額は124億円程度なので、規模としては問題ありません。
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
世カエルの実質コストは1.81%とかなり割高となっています。販売手数料も高く、これでは早々手を出せません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.573%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.81%※概算値 |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド『愛称:世カエル』の評価分析
基準価額をどう見る?
世カエルは2020年~2021年に恐ろしいほどの上昇を見せたのですが、案の定、上昇が長続きせず、2022年以降は急落しています。
こういう上下の変動が大きいファンドは投資しづらいですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、世カエルの運用実績を見てみましょう。
直近1年間の平均利回りは4.75%ですが、3年平均で見ると6%を超えています。
ただ、他のファンドと比較をするまでは本当に優れたファンドかどうか判断するのはやめてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +4.75% |
3年 | +6.64% |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
世カエルは日本株を含む海外株式カテゴリーに属していますが、投資をするのであれば、同カテゴリー内でもパフォーマンスが高いファンドに投資をしたいものです。そこで同カテゴリー内でのランキングを調べました。
世カエルは1年、3年平均利回りともに、下位20%にランクインしており、かなり厳しい順位となっています。
通常の株式ファンドよりも値動きが大きいわりに、パフォーマンスは良くないとなると、投資しづらいですね。
上位●% | |
1年 | 91% |
3年 | 83% |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
世カエルの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
年別の利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2020年、2021年と素晴らしい結果を残していますが、2022年は45%近い下落をしており、これだけ上下に変動が大きいと普通の人は投資をしないほうがいいですね。。
年間利回り | |
2023年 | +21.51%(1-9月) |
2022年 | ▲44.76% |
2021年 | +41.89% |
2020年 | +79.30% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
世カエルに投資をするのであれば、最低限、低コストのインデックスファンドよりパフォーマンスが優れていなければ、投資をする価値がありません。
世カエルは日本株を含む世界の株式に投資をしますので、同じように日本株を含む世界の株式に分散投資ができるeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)と比較をしてみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間で見ると、2022年前半までは世カエルが大きくリードしていましたが、2022年後半以降は、eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)が大きく差を広げています。
eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)のように基準価額の変動が小さく、かつ利回りが安定しているファンドに投資をするほうが普通の人は安心です。
世カエル | slim 全世界 | |
1年 | +4.75% | +23.71% |
3年 | +6.64% | +20.23% |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2023年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドへ投資をするのであれば、アクティブファンドの中でも優秀なファンドに投資をしたいものです。
そこで、今回は世界の株式に投資ができ、非常に人気の高いセゾン投信の資産形成の達人ファンドとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
こちらも直近3年間で見ると、2022年前半までは世カエルのほうがリードしていましたが、2022年の後半以降は、資産形成の達人ファンドが大きく差を拡げました。
これではアクティブファンドに投資をするにしても、世カエルに投資をするという選択肢はないですね。
世カエル | 資産形成の達人 | |
1年 | +4.75% | +20.46% |
3年 | +6.64% | +15.09% |
5年 | - | +9.75% |
10年 | - | +11.73% |
※2023年10月時点
最大下落率は?
世カエルに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここで世カエルの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲15.50% |
3カ月 | ▲28.76% |
6カ月 | ▲34.61% |
12カ月 | ▲45.42% |
※2022年10月時点
最大下落率は2021年12月~2022年11月の1年間で約45%となっています。●●ショックとつくような相場ではないタイミングでここまで大きく下落してしまうファンドは恐くて手が出しづらいです。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
それでは、世カエルの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
世カエルは2021年前半まではパフォーマンスが良かったこともあり、資金流入していました。しかし、それ以降はパフォーマンスも優れず、資金が流出超過となっています。
2020年のパフォーマンスにつられて投資をした人が2021年以降のパフォーマンスに落胆して解約が続いたといったところだと思います。
※引用:ウエルスアドバイザー
インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド『愛称:世カエル』の今後の見通しと評価まとめ
いかがでしょうか?
インターネットと同じように、ブロックチェーン技術は今後、社会や生活を大きく変えるインパクトがあると期待されています。
私の感覚としては、ブロックチェーン技術が本格的に実用化段階まで進むのは、5~10年先なのでは?と考えており、まだ注目されるには早いかと思っていましたが、どうやらそうではないようです。
冒頭で紹介したサプライチェーンの管理による食の安全管理や偽造防止、医療現場での適切な医療の提供だけにとどまらず、土地の登記や身分証明、銀行を通さない決済機能、配車・民泊といった分野でもブロックチェーンの活用が期待されています。
ですので、テーマとしては非常に面白いとは思いますが、実際の運用パフォーマンスで見ると、利回りも平均以下で、基準価額の値動きがかなり大きく、インデックスファンドにもパフォーマンスで負けてしまっています。
少なくとも現時点で世カエルに投資をする価値はないので、インデックスファンドに投資をしておけば十分でしょう。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点