近年、何かと話題のAI。AIに仕事を奪われるといった記事がネット上でも話題になるくらいAI=何かすごいと思われがちです。
そんなAIに銘柄を選定させるファンドがアセマネOneのAI(人工知能)活用型世界株ファンド『愛称:ディープAI』です。
ディープAIは果たして投資価値があるのでしょうか?
今日は、私が独自の目線で分析していきたいと思います。
「ディープAIって投資対象としてどうなの?」
「ディープAIって持ってて大丈夫なの?」
「ディープAIより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
AI(人工知能)活用型世界株ファンド『ディープAI』の基本情報
投資対象は?
まずディープAIの投資対象は、日本を除く世界の株式に実質的に投資をします。
アセットマネジメントOneが独自に開発したディープラーニングモデルを用いて相対的に投資魅力度が高いとされる銘柄を抽出し、その結果をもとにファンドマネージャーがポートフォリオを構築します。
ディープラーニングというのは、市場や株価の動きを計量的な数式で捉えようとする計量モデルの一種で、日々刻刻と変化する投資環境を学習しながら、今後値上がりする可能性の高い銘柄を予測していきます。
勘違いしないでほしいのは、ディープAIはAIに関連する企業の銘柄を組み入れたファンドではなく、AIを使って銘柄選定をするファンドであるという点です。
では、具体的にディープAIがどのような業種、国を選定しているか見てみましょう。
地域別でみると先進国の比率が高く、米国の比率が69%程度となっています。
※引用:マンスリーレポート
もう少し具体的に組入られている銘柄を見てみると、1位はアップル、2位はマイクロソフト、5位はアマゾンとなっており、有名どころがランクインしていますね。
ただ、このようなラインナップではAIに銘柄選定を任せる意味がないように感じます。
※引用:マンスリーレポート
ここで大きなポイントは、現在のディープラーニング技術では、AIだからといって、今後値上がりしそうな珍しい銘柄を選んでこれるというわけではないということです。
なんとなくすごそうという理由で購入するのはやめてくださいね。
純資産総額は?
続いて、ディープAIの純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
AI(人工知能)活用型世界株ファンド『ディープAI』の現在の純資産総額は、約280億円です。
貯金は非常に優れた運用ができているため、もう少し資金流入があってもおかしくないのではと思いますが、あまり投資家からは注目されていないようです。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ディープAIの実質コストは、1.716%と割高な水準です。
銘柄選定の大部分をAIに任せているのであれば、もう少しコストを抑えてほしいと思ってしまいますが、AIの運用保守にコストがかかっているということでしょう。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.584%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.716%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
AI(人工知能)活用型世界株ファンド『ディープAI』の評価分析
基準価額をどう見る?
ディープAIの基準価額は2021年は堅調に推移し、2022年は横ばい、2023年に入り、また大きく上昇しています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
直近1年間のディープAIの利回りは+21.27%となっています。
3年平均、5年平均利回りも10%を超えており、悪くないパフォーマンスに見えます。
ただ、この時点で優劣を判断するのは時期尚早です。他のファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +21.27% |
3年 | +19.38% |
5年 | +12.13% |
10年 | - |
※2023年9月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ディープAIは、日本を除く、グローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
ディープAIは直近1年間は上位35%程度にランクインしていますが、5年・10年平均利回りは平均以下なので、思った以上にパフォーマンスは優れているわけではないことがわかります。
上位●% | |
1年 | 34% |
3年 | 64% |
5年 | 70% |
10年 | - |
※2023年9月時点
年別の運用利回りは?
ディープAIの年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2018年、2022年はマイナスとなっていますが、20%を超えるリターンの年も何度かあります。
少なくとも毎年安定してプラスが出るわけではないことは投資をする前にしっかり理解しておいてください。
年間利回り | |
2023年 | +23.54%(1-9月) |
2022年 | ▲9.57% |
2021年 | +40.47% |
2020年 | +9.30% |
2019年 | +19.35% |
2018年 | ▲17.12% |
2017年 | - |
※2023年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとの利回り比較
ディープAIへ投資をするのであれば、他のインデックスファンドとパフォーマンスを比較してからでも遅くはありません。
今回は、全世界の株式に分散投資ができるeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)と比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
かなりパフォーマンスでは競っていますが、直近ではeMAXIS Slim全世界株式のほうが少しだけ上回っています。
これくらい僅差なのであれば、あえて高いコストを支払って、ディープAIに投資をするメリットはないですね。
ディープAI | slim 全世界株式 | |
1年 | +21.27% | +19.84% |
3年 | +19.38% | +19.63% |
5年 | +12.13% | - |
10年 | - | - |
※2023年9月時点
類似ファンドとの利回り比較
ディープAIのようなAIファンドへの投資を検討するのであれば、同じテーマのファンドとパフォーマンスを比較してから投資をしても遅くはありません。
そこで、今回は、PayPay投信AIプラスとゴールドマン・サックスグローバル・ビッグデータ投資戦略Bコースとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
この3ファンドで比較をすると、PayPay投信AIプラスが圧倒的にパフォーマンスが悪いことがわかります。
どちらにしても、eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)に及びませんので、高いコストを支払う価値はないですね。
最大下落率は?
ディープAIに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでディープAIの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲12.62% |
3カ月 | ▲19.80% |
6カ月 | ▲11.98% |
12カ月 | ▲17.12% |
※2023年9月時点
最大下落率は2020年1月~3月で約20%となっています。
運用期間がまだ短いので、大きな下落は経験していませんが、リーマンショックのときは株式ファンドは50%程度下落したこともありますので、今後、まだまだ大きな下落をすることはあると思っておいたほうがいいですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの
可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流入しているということは、それだけこのファンドを購入している人が多いということなので、評判がいいということです。
ディープAIは設定当初大きく資金流入しましたが、直近はパフォーマンスが優れないため流入が減っています。
直近1年間は流出超過に転じており、評判はよくありません。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
ディープAIは、NISAは対応していますが、iDeCoは対応していませんので、投資をするならNISAを活用してください。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2023年9月時点
AI(人工知能)活用型世界株ファンド『ディープAI』の評価まとめと今後の見通し
近年では、CHAT GPTの登場により、AIを活用したサービスも増え、さらにAIが身近な存在となりました。
こういった話を聞くと、AIに銘柄を選定してもらえば、投資がうまく行くのではないかと思ってしまいがちですが、一概にそういうわけではありません。
AIが得意なのは、過去のルールを学習し、そこから将来を予測するという方法です。もしくは、膨大な量があるもののパターンが決まっており、その中から、最適なパターンを選択するといったことです。
では、株価の予測というのはどうなのか。
株価の予測は過去のデータからある程度予測できると思われがちですが、実際そううまく行くものではありません。
特に一番注意しなければならない市場の大暴落は、一定の決まったパターンがあるわけではないので、事前に予測することはかなり難しいのが現状です。
ですので、現状、AIを使ったところで圧倒的なパフォーマンスを残せることはないというのが私なりの結論です。
実際、ディープAIもインデックスファンドを大きくアウトパフォームする成果を出すこともできていないので、あえて高いコストを支払って投資をする必要はないと言えるでしょう。
ただ、もしAIでの運用が、インデックスファンドを大きく上回ることができる時代が来たら、それはそれでとても興味深いですね。
少なくとも今はまだインデックスファンドに投資をしておけば、十分です。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点