エンジェル・ジャパンが投資助言をしているアクティブファンドの1つであるSBI小型成長株ファンド ジェイクール『jcool』。
今日は、ジェイクール『jcool』について、徹底分析していきます。
「ジェイクールって投資対象としてどうなの?」
「ジェイクールって持ってて大丈夫なの?」
「ジェイクールより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
SBI小型成長株ファンド ジェイクール『jcool』の基本情報
投資対象は?
ジェイクール『jcool』の投資対象は、新規株式公開を契機として、新たに成長を加速する起業家精神にあふれた「次代を拓く革新高成長企業」に厳選投資をします。
投資対象の成長イメージは以下のような感じです。
※引用:交付目論見書
現在の組入銘柄は52銘柄となっており、上位10銘柄は以下のようになっています。
1位のテンポイノベーションは飲食店向け店舗物件の転貸借事業を行っています。2位のステムセル研究所は臍帯血の処理・保管をする細胞バンク事業を行なっており、民間市場をほぼ独占しています。3位のコアコンセプト・テクノロジーは製造業、建設業向けのDX支援とIT人材調達支援を行っています。
※引用:マンスリーレポート
運用体制は?
ジェイクール『jcool』の運用を行っているのは、エンジェルジャパン・アセットマネジメントという国内中小型株式に特化した投資顧問会社です。
エンジェルジャパンの特徴として次の3つが挙げられます。
面談は基本経営者と直接行っている
当たり前のように感じるかもしれませんが、経営者も忙しいので、実際は会社のNo.2やNo.3と面談することも多いのが現状です。
変化の大きい企業ほど、経営者の意思決定が大きなファクターとなりますので、トップの考えを把握できているというのは大きな強みとなります。
チーム全員が面談の場に出席する。
年間延べ1000社の経営者と会うだけでも大変ですが、ヒアリングした情報に偏りがないように、チーム全員で面談し、意見を共有しあうというのは、大きな強みになります。
5年先までの収益予想シートを作成している。
5年先までの収益予測を作っている会社を他に知りませんが、こういった他がやっていないような細かい作業が銘柄選定の上で差別化ポイントになっています。
大きな金額を運用している機関投資家は時価総額の大きな企業についての調査しか興味がなく、スタンダードやグロースに上場している規模の小さな企業に対しては、アナリストが1人もついていないのが現状です。
逆に言えば、そういった企業は正しく株価が評価されていない可能性が高く、しっかりリサーチができている投資顧問会社からすると、大きなリターンを得るチャンスにつながるというわけです。
純資産総額は?
続いて、ジェイクール『jcool』の純資産総額はどうなっているか見ていきます。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができなかったり、ファンドの運用で必ず発生する運営コストが相対的に高くなるので、ファンドのパフォーマンスを悪化させる原因になります。そのため、純資産総額も事前に確認すべきポイントの1つです。
ジェイクール『jcool』は一時期300億円をこえる規模にまで成長しましたが、その後はパフォーマンスが奮わず、大きく減少しています。現在は約43億円なので、少し心許ない水準ですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ジェイクール『jcool』の実質コストは1.997%とかなり高いです。いくらパフォーマンスが良くても、実質コストが2%を超える場合は、ファンドを慎重に見極める必要があります。
購入時手数料 | 3.3%(税込) |
信託報酬 | 1.87%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.997%(概算値) |
※2023年10月時点
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
SBI小型成長株ファンド ジェイクール『jcool』の評価分析
基準価額をどう見る?
ジェイクール『jcool』の基準価額は、直近3年間で、25%ほど下落しています。
多くの日本株ファンドが基準価額の高値を更新する中で、このパフォーマンスはかなり厳しいですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、ジェイクール『jcool』の運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは+0.81%となっています。10年平均利回りは8%を超えており、優秀な成果を残しているのですが、直近の数年はお世辞にもパフォーマンスが優れているとは言えません。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +0.81% |
3年 | ▲7.03% |
5年 | ▲4.84% |
10年 | +8.43% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内中小型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ジェイクール『jcool』は、国内小型株のグロースカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、小型株カテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
ジェイクール『jcool』は、10年平均では、上位66%にランクインしていますが、1年、3年、5年平均は下から数えた方が早いです。
この結果を見る限り、あえてjcoolに投資をしようとは思いませんね。
上位●% | |
1年 | 90% |
3年 | 96% |
5年 | 99% |
10年 | 66% |
※2023年10月時点
年別の運用利回りは?
ジェイクール『jcool』の年別のパフォーマンスで見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
jcoolは2018年以降、かなり悲惨な結果となっており、これでは気軽に投資できないですね。
年間利回り | |
2023年 | ▲3.88%(1-9月) |
2022年 | ▲7.00% |
2021年 | ▲6.51% |
2020年 | ▲0.97% |
2019年 | +24.47% |
2018年 | ▲15.70% |
2017年 | +93.64% |
2016年 | +16.25% |
2015年 | +6.19% |
2014年 | +7.12% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとの利回り比較
ジェイクール『jcool』に投資するにあたって、より低コストで運用できるインデックスファンドとのパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
今回は、日経225をベンチマークとするニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、終始、ニッセイ日経225インデックスファンドのほうがパフォーマンスで大幅に上回っています。このパフォーマンスではあえて、投資をしようという気になれません。
もう少し長期のパフォーマンスを比較してみるとどうでしょうか?
jcool | ニッセイ日経 225 | |
1年 | +0.81% | +25.03% |
3年 | ▲7.03% | +13.02% |
5年 | ▲4.84% | +7.56% |
10年 | +8.43% | +9.99% |
※2023年10月時点
小型株は値動きが大きいので、どうしてもインデックスファンドに負けてしまう時もありますが、jcoolくらいまで差が拡げられていると投資はしづらいです。
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、同じカテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたいと思うもの。
今回は、ジェイクールと同じく小型株カテゴリーで非常に優秀な運用を行っている東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間の運用では、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンが大きく差をつけていることがわかります。ここまで差がつくと、ジェイクールを選びづらいです。
さらに長い期間のパフォーマンスで比較をすると、どうでしょうか?
Jcool | 東京海上ジャパン | |
1年 | +0.81% | +6.88% |
3年 | ▲7.03% | +1.77% |
5年 | ▲4.84% | +6.18% |
10年 | +8.43% | +15.63% |
※2023年10月時点
より長期の期間においても、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンのパフォーマンスが優れており、これではあえてジェイクールに投資をしようという気にはなりません。
最大下落率は?
投資するのであれば、ファンドがどの程度下落する可能性があるのかは知っておきたいところ。もちろん標準偏差から変動幅を予測することはできますが、やはり過去にどの程度下落したことがあるのかを調べるのがおすすめです。
それではジェイクールの最大下落率を見ていきます。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲24.44% |
3カ月 | ▲37.49% |
6カ月 | ▲41.97% |
12カ月 | ▲62.49% |
※2023年10月時点
ジェイクール『jcool』は2007年11月~2008年10月の間に最大▲62.49%と大幅下落しています。
リーマンショック級の大暴落はそうそう来ないとは思いますが、リターンが大きい分、リスクも大きい運用になっているという点だけは注意しておいてください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
ジェイクール『jcool』の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけジェイクール『jcool』を購入している人が多いということなので、評判が良いということです。
ジェイクール『jcool』は2019年以降、ほぼ毎月資金が流出しており、評判はかなり落ちています。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
ジェイクールのNISAとiDeCoの対応状況ですが、残念ながら、どちらも対応していません。
NISA | iDeCo |
× | × |
※2023年10月時点
SBI小型成長株ファンド ジェイクール『jcool』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
ジェイクール『jcool』を含め、国内の小型株ファンドはリターンだけを見ると、他のファンドと比較をして、高いので、多くの投資家が手を出したがります。
しかし、実際に投資をしてみると、値動きの大きさに驚いてしまい、変なタイミングでファンドを売却してしまう人が多いのも小型株ファンドです。
ですので、特に投資の経験があまりないという人は、少額から投資をするようにしてください。
いきなり大きな金額で投資をし始めると、値動きにメンタルがついていけずに、辛い時間を過ごすことになるでしょう。
ジェイクール『jcool』は直近数年のパフォーマンスは優れませんので、積極的に投資をしたいと思う人は少ないと思います。
ただ、覚えておいてほしいのは、インデックスファンドと比較をすると、アクティブファンドは、上にも下にも大きく変動する傾向があります。
ですので、一時的にインデックスファンドよりもパフォーマンスが悪くなることはよくありますので、保有をするなら少なくとも5年、10年は保有するつもりで投資をすることをおすすめします
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点