三井住友アセットが運用する、三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン(愛称:椰子の実)。
知名度はかなり廃れたものの、過去はウエルスアドバイザーのファンド・オブ・ザ・イヤーの最優秀ファンド賞(国際株式型)を受賞するなど、業界でそれなりの話題性があったファンドでした。
果たして、近年の運用状況はどうなっているのでしょうか?
今日は椰子の実について徹底的に分析していきます。
「椰子の実って投資対象としてどうなの?」
「椰子の実って持ってて大丈夫なの?」
「椰子の実より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン『椰子の実』の基本情報
投資対象は?
投資対象は日本を除く、アジア・オセアニア各国地域の好配当の株式、不動産投資信託などに投資をします。
典型的なテーマ型アクティブファンドですね。
国別でみると、台湾、オーストラリア、韓国などの比率が高くなっています。
※引用:マンスリーレポート
投資先は約90%以上が株式であり、リートは約3.9%に留まっていますが、アジアリートで投資可能な国は実質的に香港かシンガポールくらいしか無いことを考えると、やむを得ないポートフォリオなのでしょう。
※引用:マンスリーレポート
運用の特徴は?
マザーファンドの運用会社は、三井住友アセットマネジメントの香港拠点であるスミトモ ミツイ アセットマネジメント(ホンコン)リミテッドであり、このタイプのファンドにしては珍しく運用を外部委託していないことが特徴的です。
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
椰子の実は徐々に減少しており、現在の純資産総額は約200億円です。規模としては十分ですね。
※マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
椰子の実の実質コストは約1.98%と、かなり高い水準となっています。ただでさえ、運用実績が優れないのにこのコストは高すぎます。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.738%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.98%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン『椰子の実』の評価分析
基準価格をどう見る?
椰子の実の基準価額(黄線)は、この3年間で順調に上昇しています。
今までは右肩下がりの基準価額でしたが、分配金を減らしたことにより、健全な運用になっており、分配金を受け取らずに再投資した基準価額も着実に上昇しています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
椰子の実の直近1年間の利回りは20.36%です。
3年、5年、10年平均利回りは7%を超えており、株式ファンドであれば、満足のいく利回りになっているように見えます。
ただし、他の類似ファンドとパフォーマンスを比較した上で、投資判断するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +20.36% |
3年 | +18.14% |
5年 | +8.01% |
10年 | +7.29% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
椰子の実は、グローバル株式のエマージング(複数国)カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
椰子の実はすべての期間で上位20%にランクインしており、新興国株ファンドとしてはかなり優秀です。
上位●% | |
1年 | 12% |
3年 | 14% |
5年 | 12% |
10年 | 13% |
※2023年10月時点
年別の運用利回りは?
椰子の実の年別のパフォーマンスも見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2015年、2018年は2桁近いマイナスとなっていますが、それ以外の年ではしっかりとプラスの運用ができています。
年間利回り | |
2023年 | +18.41%(1-9月) |
2022年 | +4.16% |
2021年 | +14.27% |
2020年 | +2.26% |
2019年 | +12.07% |
2018年 | ▲9.96% |
2017年 | +19.44% |
2016年 | +0.66% |
2015年 | ▲9.67% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略最大下落率は?
椰子の実に投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
椰子の実の最大下落率は2007年11月~2008年10月の1年間で55.12%となっています。リーマンショックの時と比べると、コロナショックの影響はまだ小さいと言えますね。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲28.43% |
3カ月 | ▲45.15% |
6カ月 | ▲51.70% |
12カ月 | ▲55.12% |
※2023年10月時点
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
796円 | 120円 | 763% |
※2022/10/18~2023/10/16
椰子の実の直近1年間の分配健全度は763%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、100%を超えるファンドの場合は、ファンドの運用益から分配金がすべて支払われていることを意味します。
椰子の実の分配健全度はかなり健全と言えます。
ただ、椰子の実の場合は、今まで過剰な分配を続けてきて、どうしようもなくなり、分配金を10円/月まで下げたことで、分配金が健全な水準になったという点は押さえておいてください。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
(分配金利回りは基準価額に対する分配金合計額で計算ができます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +20.36% | 2.1% |
3年 | +18.14% | |
5年 | +8.01% | |
10年 | +7.29% |
※2023年10月時点
椰子の実の分配金利回りは約2.1%で、ファンドの運用利回りを下回っています。
この利回りであれば、タコ足配当になることもなく、健全な運用と分配金を受け取ることができる水準です。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
椰子の実の分配金余力は、減配したことで、現在は110カ月まで回復しました。
しばらくは減配を心配しなくてもよさそうですね。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
205期 | 10円 | 754円 | 76.4カ月 |
206期 | 10円 | 771円 | 78.1カ月 |
207期 | 10円 | 764円 | 77.4カ月 |
208期 | 10円 | 765円 | 77.5カ月 |
209期 | 10円 | 755円 | 76.5カ月 |
210期 | 10円 | 754円 | 76.4カ月 |
211期 | 10円 | 764円 | 77.4カ月 |
212期 | 10円 | 767円 | 77.7カ月 |
213期 | 10円 | 768円 | 77.8カ月 |
214期 | 10円 | 800円 | 81.0カ月 |
215期 | 10円 | 1,079円 | 108.9カ月 |
216期 | 10円 | 1,107円 | 111.7カ月 |
評判はどう?
純資産総額に見られるとおり、受益者があまりいないためか口コミ総数そのものが少ないです。そして数少ない口コミや評価を見ると、やはり散々です。
受益者からのコメントに好意的なものは全く見受けられません。
人気度を測る指標として、月次の資金流出入額がありますが、月次の純資産流出入額を見ても、2018年以降は資金流出が続いており、歯止めがかかっていません。
これは仕方ないというか、投資家がファンドを解約しているということなので、ある意味正しい行動の表れと言えます。
※引用:ウエルスアドバイザー
三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン『椰子の実』の今後の見通しと評価まとめ
投資対象などのコンセプトは決して間違ってはいないと思いますが、昨今の投資信託の傾向を考慮すると、毎月分配型である点と高額な購入手数料・信託報酬が致命的にマイナスです。
また、最近は販売会社もファンドのパフォーマンスを厳しく見るようになっているため、平凡な運用実績では積極的に「椰子の実」を販売するモチベーションは無いでしょう。
椰子の実の分配金の水準は今まで無理をしてきたことでようやく健全な水準にまで下がってきました。
そのため、今から投資をする場合は、タコ足配当になる可能性は低いと言えます。
ただ、逆に言えば、受け取ることができる分配金も少ないので、分配金目当ての投資家からすると、この水準では物足りないと感じると思います。
私自身は、毎月分配型の投資信託はおすすめしませんが、それでも投資をしたいという場合は、アライアンス・バーンスタインの米国成長株投信Dコース等が良いと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点