シーゲル博士の米国株式投資術を知っている人であれば、
配当利回りが相対的に高い企業への長期投資が中長期での
パフォーマンスがかなり良くなるという話はご存知かと
思います。
そして、このシーゲル博士の理論を応用して高配当株に投資を
できるのがバンガード社のETFであるVYMです。
日本では、このVYMに連動する商品として楽天・米国高配当
株式インデックス・ファンド『楽天VYM』という商品しか
なかったのですが、このたびSBI証券からもこのVYMに
連動するSBI・V・米国高配当株式インデックスファンドが登場します。
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドはまだ登場前
ですが、バンガードのVYMに連動している楽天VYMという
ほぼ同じ商品がすでに楽天投信から出ていますので、
この楽天VYMを分析することで、SBI・V・米国高配当株式
インデックスファンドを分析していきます。
「SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドって投資対象としてどうなの?」
「SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドって持ってて大丈夫なの?」
「SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンド『SBI VYM』の基本情報
投資対象は?
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドの投資対象は
米国の高配当株式です。
米国の高配当銘柄の銘柄を対象とするFTSE ハイディビデンド・
イールド・インデックス(円換算)に連動する投資成果を
目指します。
実際には、バンガード・米国高配当株式ETFであるVYMに
投資をすることで、上記のインデックスに連動する成果を
目指すことになります。
投資信託について少し勉強したことがある人であれば、
バンガードの名前を知らない人はいないと思いますが、
バンガードとは、世界最大級の運用会社でローコスト
リーダーとして、インデックスファンドのシェアは世界一
です。
日本でも超低コストのインデックスファンドに投資を
できるようになったのも、こういった超低コストで運用
されているETFに間接的に投資ができるからですね。
楽天VYMの組入銘柄を見てみると、10年、15年と連続
増配を続けている安定・優良企業が上位にランクイン
しています。
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドでも
ほぼ同じ構成になると考えてよいでしょう。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用が
かかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買
手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストが
かなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドの実質コストは
まだわかりませんが、楽天VYMの信託報酬は0.192%であることを
考えると、コストはかなり割安になることがわかります。
投資家としては、値下げ競争をしてもらって、さらにコストを
下げていただきたいところです。
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 0.1238%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | まだ不明 |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンド『SBI VYM』の評価分析
基準価額をどう見る?
ここから、楽天VYMのデータを見ながら、同じバンガードのVYMに
投資をするSBI・V・米国高配当株式インデックスファンドが
どのような値動きをしそうなのかを分析していきます。
楽天YVMはコロナショックの影響で1万円を大きく下回る時期も
ありましたが、2020年末には持ち直しました。
とはいえ、他のファンドと比べると、基準価額の上昇が
芳しくないですね。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
楽天VYMの1年間の利回りは15.09%となっています。
一見すると、悪くないパフォーマンスに見えますが、
高配当株式というのは、すでに成長期・成熟期を迎えた
企業なので、そこまで高い株価の成長が期待できません。
そのため、どうしてもS&P500やNYダウと比較をすると
パフォーマンスで劣後してしまいます。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 15.09% |
3年 | 6.42% |
5年 | - |
10年 | - |
※2021年4月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している北米株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
楽天VYMは、北米カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀な
パフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、
同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは
事前に調べておいて損はありません。
楽天VYMはどの期間で見ても、下位30%程度にランクイン
しており、思ったよりもパフォーマンスは優れていない
ことがわかります。
上位●% | |
1年 | 78% |
3年 | 70% |
5年 | - |
10年 | - |
※2021年4月時点
年別の運用利回りは?
続いて、年別の運用利回りを見てみましょう。
2020年は多くの米国株ファンドがプラスの利回りだった
のですが、かなり苦戦していることがわかります。
コロナショック後はテクノロジー系のグロース株が
大きく成長したので、楽天VYMには組入れられて
いなかったことが要因です。
年間利回り | |
2021年 | +20.36%(1-3月) |
2020年 | ▲6.04% |
2019年 | +22.86% |
2018年 | 1.27%(4-12月) |
※2021年4月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとの利回り比較
ここからは、楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド
『楽天VYM』と他の類似ファンドをパフォーマンスを比較
していきます。
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドもほぼ同じような
推移をすると考えて、問題ありません。
今回は、米国全体に投資ができる楽天・全米株式インデックスファンドと
S&P500に連動するeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
こう比較をしてみると、楽天VYMだけパフォーマンスで大きく
後れを取っていることがわかります。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と楽天・全米株式インデックスファンドの
パフォーマンスはほぼ変わりませんね。
楽天VYMは米国株でも成熟市場の株式が中心となるため、
どうしても株価の成長率という意味で出遅れてしまいます。
楽天VYM | slim 米国株式 | |
1年 | 15.09% | 26.64% |
3年 | 6.42% | - |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2021年4月時点
アクティブファンドとの利回り比較
楽天VYMのようなインデックスファンドに投資をする
のであれば、コストは高くなるものの高い利回りが
期待できるアクティブファンドと利回りを比較して
から投資をしても遅くはありません。
今回は、米国株のアクティブファンドとして非常に人気の高い
アライアンス・バーンスタインの米国成長株投信Bコースと
比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
終始、米国成長株投信のほうがパフォーマンスで上回っている
ことがわかります。
3年平均で見ても、米国成長株投信のほうが上回っていますし、
こうして比較をしてみると、アクティブファンドに投資するのも
悪くないとわかりますね。
楽天VYM | 米国成長株投信 | |
1年 | 15.09% | 32.10% |
3年 | 6.42% | 18.16% |
5年 | - | 18.54% |
10年 | - | 18.15% |
※2021年4月時点
最大下落率は?
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドに投資を
する前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを
知っておくことは非常に重要です。
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドは楽天
VYMと同程度に下落することが予想できますので、
楽天VYMの最大下落率も参考になる数値です。
それではここで楽天VYMの最大下落率を見てみましょう。
まだ運用期間が短いので、あまり大きな下落は経験して
いませんが、2020年1月~3月のコロナショック時に、
23.07%ほど下落しました。
自分の中で許容できる範囲で損失額を計算しながら投資を
しておかないと、いざという時に精神的に不安になり、
最悪のタイミングで手放すことになりかねません。
以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性
を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.91% |
3カ月 | ▲23.07% |
6カ月 | ▲17.08% |
12カ月 | ▲14.66% |
※2021年4月時点
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンド『SBI VYM』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしたしょうか?
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドはまだ
リリース前ですが、楽天VYMを中心に分析することで、
どのようなファンドなのかがイメージできたと思います。
高配当銘柄に投資をしていく戦略は、株価が下落すると
配当利回りが高くなるので、最終的に長期でみればリタ
ーンが高くなるという理論をもとに投資をしていく戦略
です。
そのため、株式市場が軟調な展開になるとSBI・V・米国
高配当株式インデックスファンドのような高配当株ファンド
に注目が集まってくるのですが、直近では株式市場が
好調であるため、大して人気は出ないと思います。
さきほども比較したとおり、少なくとも現状であれば、
VYMに連動するインデックスファンドよりも、
eMAXIS Slim 全米株式(S&P500)や楽天・バンガード全米株式
インデックスに投資をするのが賢明です。
今後、株式市場が軟調な展開が続くようになった時にはじめて
SBI・V・米国高配当株式インデックスファンドのようなファンド
への投資を検討すれば十分だと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点