数少ない独立系の運用会社の中で、異色なコンセプトでファンド運用をしている会社があります。それが鎌倉投信です。
「100年個人投資家に支持される長寿投信を目指し、300年社会に貢献する企業を支援し、1000年続く持続的な社会を育む」というコンセプトのもと、日本にほんとうに必要とされる良い会社に投資をしていくことを目指します。
本社が鎌倉にあり、築80年以上の古民家なのですが、会社のコンセプトを非常に大切にしていることがよくわかります。
どうやって売り抜けるかというのがあたりまえの運用業界ですが、本当に優れた会社の株式を保有しつづけるというある意味異色の運用スタイルを貫いています。
ただ、利益を求めるだけでなく、自分たちの投資資金が豊かな社会を形成するのに役立っているということが実感できます。
改めて、投資とは何なのかを考えさせられる運用をしている結い2101について今日は徹底分析していきます。
- 結い2101って投資対象としてどうなの?
- 結い2101って持ってて大丈夫なの?
- 結い210vより良いファンドってある?
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば悩みは解消すると思います。
結い2101の基本情報
投資対象は?
結い2101の投資対象は、国内外の株式です。現状は国内株式のみに投資をしており、①人材を活かせる企業②循環型社会を作る企業③日本の匠な技術・企業文化・感動サービスを世界に発信できる企業という軸で投資をしていきます。
※引用:交付目論見書
結い2101の特徴として、キャッシュポジションがかなり高くなっています。
これは、相場の方向性が定まっていないときにあえてリスク資産に振り分けるのではなく、徹底的にリスクを抑えるためです。
この運用をすると、キャッシュで資産を保有している部分にも年間のコストがかかってくるため、投資家からするとただの負債にしかなりませんが、勝てるときにしっかり勝つというスタンスは悪くないと思います。
※引用:マンスリーレポート
結い2101は現在75銘柄に投資をしており、上位10銘柄は以下となっています。
あなたも聞いたことがない企業が多いのではないでしょうか。逆に全く聞いたことがない投資先だからこそ、投資の面白みがあると言えるかもしれません。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
つづいて、結い2101の純資産総額を見てみましょう。
純資産総額が小さいと運用が効率的に行えず、余計なコストが発生したり、運用会社も運用に力を入れないため、パフォーマンスが優れないといったデメリットが発生しますので、必ずチェックするようにしてください。
一方、純資産総額が大きく、直近も純資産が増え続けているファンドは、多くの投資家が継続的に投資をしていることになるので、ファンドの評判をはかる指標の1つになります。
500~1000億=人気、1000億円以上=かなり人気と考えていいです。
結い2101の純資産総額は、現在約465億円です。規模としては全く問題ありません。結い2101自体はパフォーマンスがそこまで優れているわけではないのですが、鎌倉投信のコンセプトに共感した投資家からの資金がしっかりと流入しており純資産を伸ばしています。
実質コストは?
投資信託を運用する際には、購入時手数料や信託報酬以外にも、実際にはコストがかかっています。具体的には、株式売買手数料や有価証券取引税、印刷費用などが該当します。
これを実質コストと言いますが、実質コストが信託報酬よりもかなり高くなっていることもありますので、必ず事前に確認しておいたほうがよいポイントです。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
結い2101の実質コストは1.128%となっています。購入時手数料もかからず、実質コストもアクティブファンドの中では割安となっています。
こういった点も投資家からすると評価できるポイントです。
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 1.1%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.128%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
結い2101の独自評価と分析
基準価額をどう見る?
結い2101の基準価額を見てみましょう。2021年末から下落を始め、2024年になってもまだ高値を更新できていません。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
それでは、結い2101の利回りはどうでしょうか?
直近1年間の利回りは+0.31%となっています。
5年、10年平均利回りではプラスの利回りで運用できているようですが、果たしてこの利回りが高いのか低いのかは単体のファンドだけを見ていても、判断できません。
そのため、必ず他のファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしてください
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +0.31% |
3年 | ▲0.30% |
5年 | +3.58% |
10年 | +3.69% |
※2024年9月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内中小型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
せっかく投資をするのであれば、同じカテゴリー内でも、優れたファンドに投資をするべきです。
結い2101は国内小型株のグロースカテゴリーに属しています。
このカテゴリー内でのランキングを確認すると、全期間で平均以下の水準です。
やはりキャッシュポジションが高く、リスクを取っていないため、その分利益が伸びないという構造になっています。
特に、中長期の運用になるほど、順位が下がっているといるので、積極的に投資をするべきではないですね。
上位●% | |
1年 | 65% |
3年 | 49% |
5年 | 78% |
10年 | 96% |
※2024年9月時点
年別のパフォーマンスは?
結い2101の年別の利回りを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
大抵の日本株ファンドは2018年以外、マイナスになっていない中で、結い2101のパフォーマンスはマイナスになっている年も多く、かなり厳しい結果となっています。
年間利回り | |
2024年 | +5.60%(1-6月) |
2023年 | +1.12% |
2022年 | ▲1.78% |
2021年 | ▲1.15% |
2020年 | +8.27% |
2019年 | +9.44% |
2018年 | ▲7.97% |
2017年 | +17.67% |
2016年 | ▲1.81% |
※2024年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンスの差は?
結い2101に投資をするのであれば、より低コストで運用ができるインデックスファンドとのパフォーマンス比較は不可欠です。
今回は、日経225に連動しているニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
結果は終始、結い2101が負ける形となっています。これでは、高いコストを支払ってまで投資をする価値がありません。
この傾向は、より長期のパフォーマンスで比較をしてみても変わりませんでした。結い2101にあえて投資するメリットないですね。
年平均利回り | 結い2101 | ニッセイ225 |
1年 | +0.31% | +20.41% |
3年 | ▲0.30% | +13.16% |
5年 | +3.58% | +15.19% |
10年 | +3.69% | +11.42% |
※2024年9月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
結い2101への投資を検討するのであれば、同じように国内の小型株に投資ができるアクティブファンドと比較をしておいても損はありません。
今回は、国内中小型株で非常に人気の高い東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンと比較をしてみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間については、ほぼ互角の運用となっています。キャッシュポジションが高い結い2101のほうが基準価額の変動は小さくなっていますね。
ただ、より長期の運用利回りで比較をすると、かなり大きく差をつけられています。アクティブファンドに投資をするにしても、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式ファンドに投資をするほうが賢明でしょう。
年平均利回り | 結い2101 | ジャパン・オーナーズ |
1年 | +0.31% | +7.89% |
3年 | ▲0.30% | +1.81% |
5年 | +3.58% | +9.33% |
10年 | +3.69% | +15.12% |
※2024年9月時点
最大下落率は?
投資信託は最低でも5~10年は投資をする気でなければ、投資をする意味がありませんが、その最大の障壁となりえるのが、資産の減少です。
特に20%や30%の下落相場を始めて経験すると、資産の減少額に耐えきれなくなり、本来手放すべきタイミングではないときに慌てて売却してしまいがちです。
そのため、事前にどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
結い2101の運用が優れているのは、5年以上運用しているなかで最大下落率が11%程度しかないことです。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲8.00% |
3カ月 | ▲11.72% |
6カ月 | ▲8.71% |
12カ月 | ▲9.54% |
※2024年9月時点
プラスのリターンもそこまで大きく出ていませんが、下落を抑えた運用ができているのは素晴らしいですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
結い2101の評判を確認する上で、毎月の資金の流出入が役立ちます。
資金流入が多くなっていれば、人気が出てきているファンドであるとわかりますし、流出が続いているようであれば、評判が悪くなっているファンドと言えます。
それでは、結い2101の評判を見てみましょう。
パフォーマンスはお世辞にも優れているとは言えないのですが、思ったより、資金が流入超過となっている月が多いです。
ただ、さすがに2024年は資金が流出超過になっている月が多く、パフォーマンスが悪いので、耐えきれなくなった投資家が売却しているものと思われます。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
結い2101はNISAで取り扱いがありますので、積極的に活用していきましょう。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2024年9月時点
結い2101の個人的評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
投資となると、どうしても自分の自己資金が増えた減ったに目が活きがちになり、投資の本来の姿を見失ってしまうことがあります。パフォーマンスだけを見れば、日経225に連動するインデックスファンドを購入するほうが間違いないでしょう。
しかし、収益偏重となっている中で、鎌倉投信の運用スタンスは投資した企業と一緒に成長していく楽しみを思い出させてくれます。
自分が投資した資金がどのような企業に投資され、どのように使われているのかを知ることは投資家としては非常にうれしいものです。
個人的には、鎌倉投信の一貫したコンセプトというのが運用会社としてというより、一企業として非常に優れていると思っていますので、ぜひご自身でも詳しく調べていただくと面白いと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点