シーゲル博士の米国株式投資術を知っている人であれば、配当利回りが相対的に高い企業への長期投資が中長期でのパフォーマンスがかなり良くなるという話はご存知かと思います。
シーゲル博士の書籍はベストセラーとして多くの投資家がバイブルとして実践しているので、楽天VYMが登場した当初は人気がでるか?と思いました。しかし、運用が開始されて3年以上経ちますが、そこまで人気が出てもいません。
それはなぜなのか、楽天VYMを徹底分析していきます。
「楽天VYMって投資対象としてどうなの?」
「楽天VYMって持ってて大丈夫なの?」
「楽天VYMより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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『楽天VYM』楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドの基本情報
投資対象は?
楽天VYMの投資対象は米国の高配当株式です。米国の高配当銘柄の銘柄を対象とするFTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス(円換算)に連動する投資成果を目指します。
組入資産を見てわかるとおり、実際はバンガード・米国高配当株式ETFであるVYMに投資をしていきます。
投資信託について少し勉強したことがある人であれば、バンガードの名前を知らない人はいないと思いますが、バンガードとは、世界最大級の運用会社でローコストリーダーとして、インデックスファンドのシェアは世界一です。
日本でも超低コストのインデックスファンドに投資をできるようになったのも、こういった超低コストで運用されているETFに間接的に投資ができるからですね。
※引用:マンスリーレポート
楽天VYMの組入銘柄を見てみると、10年、15年と連続増配を続けている安定・優良企業が上位にランクインしています。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
楽天VYMのつみたてNISAとiDeCoの対応状況ですが、残念ながらつみたてNISA、iDeCoのどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
楽天VYMの純資産総額は95億円とまだ少し物足りたいですが、着実に資産は増やしています。
やはり、シーゲル流の投資術を実践している人であれば、個別株に投資をしている場合のほうが多いでしょうし、S&P500や米国全体に投資ができるファンドのほうがパフォーマンスも優れているので、そこまで注目している投資家がいないと言えます。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
楽天VYMの実質コストは0.281%となっており、以前と比べると実質コストもかなり下がってきました。
とはいえ、まだ純資産総額が小さいので、コスト自体は少し割高になってしまうのは割り切って投資するしかないですね。
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 0.192%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 0.281%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
『楽天VYM』楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドの評価分析
基準価額をどう見る?
楽天VYMの基準価額はコロナショックの影響で1万円を大きく下回る時期もありましたが、2020年以降は着実に上昇を続けています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
楽天VYMの直近1年間の利回りは21.28%となっています。
2022年は多くの株式ファンドが下落する中で、20%超の利回りは素晴らしいですね。3年平均も15%以上のプラスとなっており、好調です。
高配当株はS&P500やNYダウと比較をすると成長率が落ちるため、パフォーマンスで劣後することが多いのですが、少なくとも直近はいい勝負ができそうです。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +21.28% |
3年 | +16.36% |
5年 | - |
10年 | - |
※2022年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している北米株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
楽天VYMは、北米カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
楽天VYMは3年平均利回りで40%程度なので、そこまで優れているわけではありませんが、悪くないパフォーマンスにはなっていますね。
上位●% | |
1年 | 8% |
3年 | 40% |
5年 | - |
10年 | - |
※2022年10月時点
年別の運用利回りは?
楽天VYMの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
2020年は多くの米国株ファンドがプラスの利回りだったのですが、かなり苦戦していることがわかります。しかし、2021年、2022年は非常に好調で、2020年の負け分を取り戻していますね。
年間利回り | |
2022年 | +9.47%(1ー9月) |
2021年 | +41.10% |
2020年 | ▲6.04% |
2019年 | +22.86% |
2018年 | +1.27%(4-12月) |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとの利回り比較
楽天VYMへ投資をするのであれば、他のインデックスファンドとパフォーマンスを比較してからでも遅くはありません。
今回は、米国全体に投資ができる楽天・全米株式インデックスファンドとS&P500に連動するeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
こう比較をしてみると、悪くはないモノの、やはり楽天VYMだけパフォーマンスで後れを取っていることがわかります。
ただ、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500も楽天・全米株式インデックスファンドもかなりパフォーマンスは優れているので、ここまで良い勝負ができるのであれば、悪くないです。
楽天VYM | slim 米国株式 | |
1年 | +21.28% | +9.42% |
3年 | +16.36% | +19.72% |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2022年10月時点
アクティブファンドとの利回り比較
楽天VYMのようなインデックスファンドに投資をするのであれば、コストは高くなるものの高い利回りが期待できるアクティブファンドと利回りを比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、米国株のアクティブファンドとして非常に人気の高いアライアンス・バーンスタインの米国成長株投信Bコースと比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
終始、米国成長株投信のほうがパフォーマンスで上回っていることがわかります。
3年平均で見ても、米国成長株投信のほうが上回っていますし、こうして比較をしてみると、アクティブファンドに投資するのも悪くないとわかりますね。
楽天VYM | 米国成長株投信 | |
1年 | +21.28% | ▲2.18% |
3年 | +16.36% | +19.77% |
5年 | - | +16.49% |
10年 | - | +20.33% |
※2022年10月時点
最大下落率は?
楽天VYMに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここで楽天VYMの最大下落率を見てみましょう。まだ運用期間が短いので、あまり大きな下落は経験していませんが、2020年1月~3月のコロナショック時に、23.07%ほど下落しました。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.91% |
3カ月 | ▲23.07% |
6カ月 | ▲17.08% |
12カ月 | ▲14.66% |
※2022年10月時点
自分の中で許容できる範囲で損失額を計算しながら投資をしておかないと、いざという時に精神的に不安になり、最悪のタイミングで手放すことになりかねません。
以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
それでは、楽天VYMの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
楽天VYMは毎月の流入超過額自体は大きくはありませんが、安定して流入額が増えており、高配当投資に興味をもつ投資家が一定数いることを意味しています。
とはいえ、純資産総額自体は大きくありませんので、近年流行りのインデックスファンドと比べると人気はいまいちのようです。
※引用:モーニングスター
『楽天VYM』楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドの評価まとめと今後の見通し
高配当銘柄に投資をしていく戦略は、株価が下落すると配当利回りが高くなるので、最終的に長期でみればリターンが高くなるという理論をもとに投資をしていく戦略です。
そのため、株式市場が軟調な展開になると楽天VYMのパフォーマンスも注目されるようになると思いますが、eMAXIS Slim 全米株式(S&P500)や楽天・バンガード 全米株式インデックスと比べても、まだパフォーマンスで劣後しているので、日の目を見ないような状況です。
少なくとも現状、楽天VYMよりも、eMAXIS Slim 全米株式(S&P500)や楽天・バンガード 全米株式インデックスよりパフォーマンスで上回ってくると、より注目を浴びそうです。
また米国株のアクティブファンドの中には、アライアンスバーンスタインの米国成長株投信のようにインデックスファンドよりも優れたファンドも数少ないですが、存在しています。
ですので、全部と言わないまでも、アクティブファンドへの投資も検討してみると面白いと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点