三菱UFJ国際投信が出しているつみたてNISA向けのファンドには3種類あり、一つは以前からある「eMAXISシリーズ」、もう一つが超低コストでネット証券向けの「eMAXIS Slimシリーズ」、それから金融機関で相談できる「つみたてんとうシリーズ」があります。
ベンチマークは同じなので、あとはコストの差になるのですが、今日はこの「つみたてんとうシリーズ」から、世界の先進国株式に投資する「つみたて先進国株式」を独自の目線で分析したいと思います。
こんなことがわかる
- つみたて先進国株式は投資対象として、あり?なし?
- つみたて先進国株式より良いファンドってある?
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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つみたて先進国株式の独自評価と分析
投資対象は?
つみたて先進国株式の投資対象は、日本を除く先進国の株式です。MSCI Kokusai Index(MSCIコクサイ インデックス) (円換算ベース)と連動する投資成果をめざして運用を行います。
直近の組入上位10カ国・地域は以下の通りです。先進国の株式とありますが、70%以上がアメリカの株式になります。
※引用:マンスリーレポート
ここから見ても、米国の株式がいかに強いかがよくわかりますね。他は欧州やカナダなどが続いています。
組入上位10銘柄は、アップル、マイクロソフト、アマゾンなど日本でもお馴染みの銘柄になります。また業種も分散されています。
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
ファンドの純資産総額が小さいと、監査費用や印刷費用、その他諸経費が相対的に比率が高くなるので、実質コストが高くなりがちです。早期償還のリスクもありますね。
また会社としてもファンドの運用に人員を割けなくなるため、パフォーマンスが悪化する原因にもなります。最低でも50億円、余裕を持って100億円はほしいところです。
つみたて先進国株式は2017年8月に設定されましたが、2018年のつみたてNISA開始に伴い純資産総額が徐々に上昇。毎年着実に純資産は増えており、現在は2680億円ほどになりました。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?これを実質コストと言いますが、実質コストには株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
つみたて先進国株式の実質コストは、0.259%となります。
実質コストが0.3%程度であれば、他の多くのファンドとくらべれば、十分に低いのですが、現在ネット向けのインデックスファンドの低価格競争が行われおり、0.1%台のファンドもいくつか出てきています。
同社が運用するeMAXIS Slim先進国株式インデックスは同じマザーファンドですが、信託報酬率は0.12%です。そうすると、あえてコストが高いファンドを選択する理由もありません。
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 0.22%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 0.259%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
基準価額をどう見る?
つみたて先進国株式は2022年はほぼ横ばいでしたが、2023年、2024年とまた大きく上昇し続けています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、つみたて先進国株式の運用実績を見てみましょう。
平均利回り | |
1年 | +22.24% |
3年 | +17.06% |
5年 | +20.55% |
10年 | - |
※2024年9月時点
直近1年間の利回りは22.24%のプラス、3年平均、5年平均利回りは約15%を超えており、非常に好調のように思えます。
ただ、この時点で投資判断するのは時期尚早です。他に優れたファンドがあるかもしれないので、比較をしてから投資をするようにしてください。
またMSCIコクサイに連動するインデックスファンドでもっと長期間のパフォーマンスを見ておきたいという方は、ニッセイ 外国株式インデックスを見てみてください。
同カテゴリー内での利回りランキングは?
つみたて先進国株式は、日本を除くグローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
つみたて先進国株式は、3年平均、5年平均利回りで見ると、上位25%にランクインしており、インデックスファンドの割にかなり上位に位置しています。
上位●% | |
1年 | 23% |
3年 | 23% |
5年 | 18% |
10年 | - |
※2024年9月時点
年別のパフォーマンスは?
つみたて先進国株式は年別のパフォーマンスを見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2018年・2022年がマイナスとなっていますが、それ以外の年は十分な利回りを確保できています。
年間利回り | |
2024年 | +25.82%(1-6月) |
2023年 | +32.30% |
2022年 | ▲5.53% |
2021年 | +38.19% |
2020年 | +8.88% |
2019年 | +28.76% |
2018年 | ▲11.09 |
※2024年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは類似ファンドとのパフォーマンス比較
つみたて先進国株式のようにMSCIコクサイに連動するインデックスファンドは本当に数多く存在しています。
しかし、同じMSCIコクサイに連動していても、手数料の差でパフォーマンスに差がつきます。
ここでは、MSCIコクサイに連動するインデックスファンドの中で、最もコストが割安なeMAXIS Slim先進国株式インデックスとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
わずかな差ですが、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスが優位となっています。
両ファンドはともに、MSCIコクサイに連動するインデックスファンドですので、わずかにパフォーマンスに差が生まれているのは、実質コストによる差です。
eMAXIS Slim 先進国株式インデックスのほうが実質コストが低いので、さきほどのような結果となっています。
では、より長期の利回りではどうでしょうか?
年平均利回り | つみたて先進国 | slim 先進国 |
1年 | +22.24% | +22.39% |
3年 | +17.06% | +17.20% |
5年 | +20.55% | +20.70% |
10年 | - | - |
※2024年9月時点
5年平均利回りでも、わずかですが、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスが上回っています。
銀行でどうしてもつみたて先進国株式を買いたいという人でなければ、ネット証券に口座を開設し、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスを購入したほうが賢明と言えますね。
とは言ったものの実質コストは誤差の範囲ですので、そこまで気にしなくてもよい水準ではあります。
つづいて、つみたて先進国株式に投資を検討するうえで同じく、つみたててんとうシリーズのつみたて全世界株式とつみたて米国株式(S&P500)とパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
やはりつみたて米国株式(S&P500)が強いことがわかります。先進国に分散投資をどうしてもしたいというわけでなければつみたて米国株式(S&P500)のほうがおすすめです。
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
インデックスファンドへの投資もよいですが、優れたアクティブファンドへの投資も選択肢として悪くありません。
そこで、今回は先進国株式を投資対象にアクティブ運用している大和住銀DC海外株式アクティブファンドを比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
2022年以降、つみたて先進国株式のパフォーマンスがかなり上回っています。この結果なら、インデックスファンドへの投資で十分ですね。
年平均利回り | つみたて先進国 | 大和住銀DC |
1年 | +22.24% | +19.92% |
3年 | +17.06% | +9.12% |
5年 | +20.55% | +20.19% |
10年 | - | +15.00% |
※2024年9月時点
最大下落率は?
投資信託は最低でも5~10年は投資をする気でなければ、投資をする意味がありませんが、その最大の障壁となりえるのが、資産の減少です。
特に20%や30%の下落相場を始めて経験すると、資産の減少額に耐えきれなくなり、本来手放すべきタイミングではないときに慌てて売却してしまいがちです。
そのため、事前にどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
それではここでつみたて先進国株式の最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲15.04% |
3カ月 | ▲21.64% |
6カ月 | ▲13.00% |
12カ月 | ▲11.18% |
※2024年9月時点
最大下落率は、2020年1月~3月の▲21.64%です。やはりコロナショックの暴落が一番影響が大きかったようです。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
それでは、つみたて先進国株式の評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
つみたて先進国株式はつみたてNISA向けのファンドですので、2018年のつみたてNISA開始に伴い資金が流入していることがわかります。つみたてを途中でやめる人が増えない限りは流出超過にはなりませんので、安定した資金流入が今後も期待できそうです。
※引用:ウエルスアドバイザー
つみたて先進国株式の個人的評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
つみたて投資をするのであれば、MSCIコクサイに連動するインデックスファンドは保有しておいて損はありません。中長期でみても、着実に成長している指数なので、長期保有をしっかり続けることができれば間違いないでしょう。
つみたて先進国株式は金融機関向けのつみたてNISAでじっくり相談しながら購入できるという目的があるため、信託報酬がeMAXISSlim先進国株式インデックスより割高になっています。
ただ、割高になってるといっても、誤差の範囲内ですので、そこまで気にしなくてもいい水準ではあります。
ご自分でコスト面も考慮してネット証券で買うなら、eMAXISSlim先進国株式インデックス、金融機関で相談したいのならつみたて先進国株式とそれぞれのニーズに合わせて買いましょう。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点