最近流行りのレバレッジ型ファンドでは、相場状況に関係なく常に同じレバレッジを効かせて運用を行うため、2倍のレバレッジを効かせていれば、下落局面では2倍下落してしまうという問題を抱えていました。
そこで、登場してきたのが、下落局面では、レバレッジを小さくし、上昇局面ではレバレッジをフル活用するという運用戦略です。
理論上は、一番理想ではあるのですが、はたして、どこまで理想に近い運用ができるのかは見物です。
三菱UFJ国際投信の米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド『愛称:クォーターバック』は投資価値があるのか、徹底分析していきます。
「米国株式シグナルチェンジ戦略ファンドって投資対象としてどうなの?」
「米国株式シグナルチェンジ戦略ファンドって持ってて大丈夫なの?」
「米国株式シグナルチェンジ戦略ファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の基本情報
投資対象は?
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の投資対象は、米国株式および米国の株価指数先物取引です。
株式部分はS&P500配当貴族指数に連動した投資成果を目指します。
S&P500配当貴族指数とは?
S&P500配当貴族指数は、S&P500構成銘柄の中から少なくとも25年間増配している等の基準に基づき企業を抽出し、算出している株価指数です。
現在の構成銘柄は64銘柄となっており、上位10銘柄は以下のようになっています。
※引用:マンスリーレポート
1989年からのパフォーマンスをS&P500と比較してみると、S&P500配当貴族指数のほうが2倍近く高い成果を残していることがわかります。ただ、直近数年はS&P500のほうがパフォーマンスは好調です。
※引用:商品説明資料
運用の特徴は?
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の投資戦略では、株式部分としてS&P500配当貴族指数70%程度組入れつつ、投資環境に応じて先物を活用し、株式組入比率を変更します。
平常時は株式比率を200%にまで上げることで、米国株式のみに投資するよりも大きな値上がりが期待できます。一方で、リスク回避時は株式比率を0%に引き下げることで、価格変動リスクの低減をはかります。
相場状況に合わせて、運用戦略を変えるというのは、昔から言われていることですが、実際には相場の変動を事前に察知して、組入比率を変えるというのは、そう簡単にうまくいくものではないというのが私の本音です。
※引用:商品説明資料
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』のつみたてNISAとiDeCoの対応状況ですが、残念ながら、今のところどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
純資産総額は?
続いて、米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
米国株式シグナルチェンジ戦略ファンドは下図のように2020年2月以降は伸び悩んでいますが、360億円程度の規模は維持しています。
模としては問題ないですね。
※マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』は購入時手数料に3.3%の手数料をしっかりと取られるだけでなく、実質コストも1.8%台なので、気軽に投資はできません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.76%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.82%※概算値 |
※引用:最新交付目論見書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の評価分析
基準価額をどう見る?
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の基準価額は、通常の株式ファンドとはかなり異なる値動きをしています。これは、レバレッジの度合いを相場状況に合わせて組み替えたことによるものです。
コロナショックは確かにうまく乗り切っているのですが、2020年後半や2022年に入ってからはコロナショック以上の下落を見せており、この時点ではパフォーマンスが良いのかわかりません。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは+0.16%となっています。多くの株式ファンドが2桁のマイナスになっている中でいうと、健闘しているほうでしょう。
ただし、他のファンドとのパフォーマンスを比較するまでは投資判断しないようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +0.16% |
3年 | - |
5年 | - |
10年 | - |
※2022年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』は、国際株式の北米カテゴリーに属しています。
パフォーマンスが良く見えても、実はもっと優れたファンド見つかることもありますので、同カテゴリー内でのパフォーマンスは必ず比較するようにしてください。
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』は平均的な水準であり、他にもっと優れたファンドがいくつもあることがわかります。
平均的なパフォーマンスではあえて高いコストを支払ってまで投資するメリットはないですね。
上位●% | |
1年 | 55% |
3年 | - |
5年 | - |
10年 | - |
※2022年10月時点
年別の運用利回りは?
つづいて、米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2020年、2021年と2桁成長しており、順調な運用ができていましたが、2022年は今のところマイナスです。
年間利回り | |
2022年 | ▲8.69%(1-9月) |
2021年 | +27.90% |
2020年 | +11.35% |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』へ投資をするのであれば、低コストで投資ができるインデックスファンドとパフォーマンスを比較してから投資をするほうが賢明です。
今回は、S&P500に連動するインデックスファンドとして常に人気の高いeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と比較をしました。
※引用:モーニングスター
2021年の後半からは、米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』が負けています。
コロナショックは明らかに米国シグナルチェンジ戦略ファンドがうまく切り抜けてきたことがわかりますが、その後に謎の急落を見せており、ここでインデックスファンドとの差がなくなりました。
正直このパフォーマンスの差であれば、低コストのインデックスファンドに投資をすれば十分と言えます。
急落相場に強いファンドというのは、確かに存在しますが、米国シグナルチェンジ戦略ファンドのように急落相場以外のタイミングで運用がうまくいかないことも多く、しっかりと運用の癖を調査したうえで、投資をするほうが賢明です。
シグナルチェンジ | slim米国株式 | |
1年 | 0.16% | +9.42% |
3年 | - | +19.72% |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2022年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』への投資を検討するのであれば、他のアクティブファンドとパフォーマンスを比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、S&P500の銘柄の中から優れた銘柄だけに絞り込んで運用しているアライアンス・バーンスタインの米国成長株投信とパフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
結果は、2020年は拮抗していましたが、それ以降は概ね米国成長株投信が勝つ結果となりました。
レバレッジを活用せずとも、高いパフォーマンスを出している米国株のアクティブファンドもありますので、無理にレバレッジ型のファンドを選ぶ必要もないということですね。
シグナルチェンジ | 米国成長株投信 | |
1年 | 0.16% | ▲2.18% |
3年 | - | +19.77% |
5年 | - | +16.49% |
10年 | - | +20.33% |
※2022年10月時点
最大下落率は?
投資を始めようとしている、もしくは始めたばかりの人が気になるのが、最大どの程度、資産が下落する可能性があるのかという点かと思います。
そこで米国シグナルチェンジ戦略ファンドの最大下落率を調べてみました。
下落率 | |
1カ月 | ▲14.09% |
3カ月 | ▲13.00% |
6カ月 | ▲10.96% |
12カ月 | +0.16% |
※2022年10月時点
米国シグナルチェンジ戦略ファンドの最大下落率は、2020年9月の1か月間で14.09%となっています。他の株式ファンドは全く影響がなかった期間ですので、とてももったいないですね。ただ、下落幅は抑えられている点は評価できます。
評判はどう?
続いて、米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の評判を見てみたいと思います。
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流入しているということは多くの投資家がファンドを購入しているということなので、評判がいいということになります。
米国シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』は2020年までは、毎月資金流入がしていますが、2021年に入り、資金が流出超過となっています。
インデックスファンドと大して変わらない結果しか残せていないので、仕方がないと言えば、仕方ないですね。
※引用:モーニングスター
米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド『クォーターバック』の評価まとめと今後の見通し
レバレッジ型ファンドの問題点の一つが、下落局面で、通常よりも大きく下落してしまい、もどの水準に戻すまでにかなりの時間を要するといった点です。
この大きな弱点を米国株式シグナルチェンジ戦略ファンドはレバレッジを相場状況に合わせて変更することで、克服しています。
ただ、この相場状況に合わせて組入比率を変更するというのは、システム制御していたとしてもかなり難しく、以前から警鐘を鳴らしていた通り、予期せぬタイミングで大きな損失を生みました。
それがなければ、インデックスファンドを大きく上回るパフォーマンスだっただけに残念でなりませんが、現状、インデックスファンドを大きく上回るような成果は残せていません。
ただ、少なくとも下落を抑えるという意味では、コロナショックをうまく運用して来れているので、それ以外のタイミングで予期せぬ損失を生みさえしなければ、今後優れたファンドの仲間入りをしてもおかしくないです。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点