近年、非常に注目されているESG投資の中にも実は色々な投資手法があります。
その中でも、社会的課題の解決(社会的利益)と投資リターンの2つの利益の獲得を目指すのがインパクト投資とよばれる手法です。
今回は、三菱UFJ国際投信のベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド『愛称:ロイヤル・マイル』について徹底分析していきます。
「ロイヤル・マイルって投資対象としてどうなの?」
「ロイヤル・マイルって持ってて大丈夫なの?」
「ロイヤル・マイルより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド『愛称:ロイヤル・マイル』の基本情報
投資対象は?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの投資対象は、日本を含む世界各国の株式です。社会的インパクトをもたらす事業によって、長期の視点から成長が期待される世界各国の企業の株式に投資をしていきます。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの国別の投資比率及び、業種別の投資比率を見てみましょう。国別では、アメリカが約5割、次いで、中国、フランスとなっています。業種別では、一般消費財・サービス領域の銘柄の比率が高くなっています。
※引用:マンスリーレポート
現在の組入銘柄数は37銘柄となっており、かなり銘柄を絞り込んでいますね。
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額が多いほうが、ファンドマネージャーが資金を投資する際に有利であったり、他の投資家の解約の際の影響が小さくなりますので、優れた投資信託と言えます。
投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは現在、770億円程の規模にまで成長しています。2021年に純資産が大きく増加し、それ以降は伸び悩んではいますが、ファンドの規模としては十分です。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの実質コストは1.59%と割高です。
近年のアクティブファンドの中ではまだマシな水準ですが、購入時手数料もかかるので、投資する際には慎重にならざるを得ませんね。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.5895%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.59%※概算値 |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド『愛称:ロイヤル・マイル』の評価分析
基準価額をどう見る?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは2021年末までは恐ろしいほどの上昇を見せていました。
しかし、2022年以降はその反動で急落しており、2023年も大したパフォーマンスにはなっていません。銘柄を絞り込んでいるため、上昇するときも下落する時も変動幅が大きくなっていますね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは16%ですが、3年平均利回りは1%ということで、この時点で相当値動きの激しいファンドであることがわかります。
ただ、この時点で投資判断するのは時期尚早です。同カテゴリーの他のファンドをパフォーマンスを比較したうえで投資をしていきましょう。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 16.61% |
3年 | 1.15% |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは日本株を含む海外株式カテゴリーに属していますが、せっかく投資をするのであれば、同カテゴリー内でもパフォーマンスが高いファンドに投資をしたいものです。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは直近1年と3年の両方で下位20%に入っており、パフォーマンスは最悪に近い状況です。
上位●% | |
1年 | 84% |
3年 | 96% |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
年別の利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2020年は83%と驚異的な結果となっています。2022年は40%近いマイナスとなっており、上下に変動が大きすぎて、普通の投資家には手を出せないようなファンドです。
年間利回り | |
2023年 | +29.13%(1-9月) |
2022年 | ▲38.98% |
2021年 | 13.40% |
2020年 | 83.47% |
2019年 | 15.49%(4-12月) |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドに投資をするのであれば、最低限、低コストのインデックスファンドよりパフォーマンスが優れていなければ、投資をする価値がありません。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは日本株を含む世界の株式に投資をしますので、同じように日本株を含む世界の株式に分散投資ができるeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)と比較をしてみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ是機関において、ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは負けてしまっています。
これでは、高いコストを支払って、アクティブファンドに投資をするメリットは感じられません。また、ロイヤル・マイルは基準価額の値動きがかなり大きいので、普通の人ではまず耐えられません。
ロイヤル・マイル | slim 全世界 | |
1年 | 16.61% | 23.71% |
3年 | 1.153% | 20.23% |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2023年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドへ投資をするのであれば、アクティブファンドの中でも優秀なファンドに投資をしたいものです。
そこで、今回は世界の株式に投資ができるセゾン投信の資産形成の達人ファンドとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
こちらでも、直近3年間においては、ほぼ全期間で、ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドがパフォーマンスで下回っています。
高いコストを支払ってアクティブファンドに投資をするとしても、ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドに投資をする選択肢はないですね。
ロイヤル・マイル | 資産形成の達人 | |
1年 | 16.61% | +20.46% |
3年 | 1.15% | +15.09% |
5年 | - | +9.75% |
10年 | - | +11.73% |
※2023年10月時点
最大下落率は?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲22.72% |
3カ月 | ▲29.50% |
6カ月 | ▲39.10% |
12カ月 | ▲38.98% |
※2023年10月時点
最大下落率は2022年1月~2022年12月の1年間で約39%となっており、●●ショックとつかないような相場であるにもかかわらず、この下落幅はさすがに投資をするのが恐いですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
それでは、ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドは2021年の後半を除いて、基本資金が流入超過となっています。ですので、評判は悪くないことがわかりますが、明らかに流入超過額が減ってきているので、近々流出がどんどん進んでいくと思います。
※引用:ウエルスアドバイザー
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド『愛称:ロイヤル・マイル』の今後の見通しと評価まとめ
いかがでしょうか?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドへの投資は社会貢献も兼ねて投資ができ、かつ高いリターンも期待できるということで、投資を始めた人も多いと思います。
ただ、残念なことに、社会貢献とリターンの両方を実現するという考え方には深く共感するものの、実現可能性については昔から疑問に思っており、私が知る限り、この両者を実現できているファンドは知りません。
少なくともインデックスファンドにはパフォーマンスで上回ってもらわなければ、あえて高いコストを支払う気にもなれません。またかなり値動きが大きいので、投資を始めたばかりの人にはあまり向かないファンドではあります。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドのように社会的貢献とリターンの両方を追求できるファンドが増えれば、より投資資金も集まりやすくなり、社会がより豊かになっていくのは間違いありませんが、あとはリターンがついてくるかどうか。
すべてはそこにかかっています。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点